「アニメ制作会社」倒産の一方で新会社も次々と…。今後の経営のカギは?
これからのアニメ制作会社の経営に「必要なこと」は?
――これからアニメ制作会社を経営していく上で、どのような取り組みに活路があると思いますか?
加瀬 いい面ばかりではありませんが、日本のアニメ業界は海外から大きな注目を浴びていると思うんです。技術を盗まれてしまう心配もあるかと思いますが、逆にそこをうまく使うスタンスで海外の企業と付き合いをして、資金調達も技術も「成長の糧」にして事業展開していくという、ある種の柔軟さを身につけられると幅が広がると思います。
――海外との事業でチャンスが広がる一方、リスクもありますよね?
加瀬 いきなり土地勘のない海外と直接付き合うのは難しいので、現地にいる日本人とパイプを作って、リスクを抑えながら付き合うのがいいですね。最近では仲介となってサポートしてくれる会社も増えているので、そういうところの力を借りて海外に出ていくやり方をすると、「お金の稼ぎ方には広がりがある」ということに気づけると思います。
――アニメを作るだけでなく、売り方を多様化していくということも必要でしょうか?
加瀬 そうですね。今はひとつのコンテンツを多くのエリアで、そして従来よりも多くの販路でマネタイズすることができるようになっています。この流れは今後も続くのではないでしょうか。新しい流れを積極的に活用して展開していくのはうまい戦い方だと思います。
ただ、これはものづくりではなくビジネスの話になってしまうので、クリエイティブとビジネスがうまくタッグを組むことも重要になりますね。最終的には、業界外の一般企業の方々も巻き込みながら事業展開できるかどうか、肝になってくると思います。
――業界の外につながりを作っていくことも大切なのですね。
加瀬 他の業界の人たちともビジネスの議論をできるようになった方が、自分たちの夢の実現に近づけるはずです。「いいもの」や「作りたいもの」をただ作っても、必ずしもそれが売れるわけではないのが現状です。経営者が難しいのは、そのギャップをうまく埋められるかどうか、あるいは埋まらなかった時に、クリエイターの方々に納得してもらえる道を切り開けるかどうかが、重要になってくると思います。
――経営者としては、これから考えなければならないことが多いわけですね。
加瀬 何でもかんでも自分でやる必要はないと思うんです。世の中にはアニメ業界が好きな方はたくさんいるので、例えば会計や資金繰りの部分は私たちのような税理士をうまく活用しながら進めていくことが大事だと思います。
* * *
制作会社の倒産が年々増えていることから考えると、アニメ制作会社は「起業しやすい」一方、重要なのはその先にある「継続すること」と考えられます。全体的に見れば「絶好調」のアニメ市場が注目を集めているなか、どのようにして新しいつながりや知恵を取り入れ、経営の仕組みづくりに活かしていくかが大切なポイントになりそうです。
(遠山彩里)
●加瀬洋(かせ・ひろし)
アカウンティングフォース税理士法人・代表税理士。
青山学院大学経営部卒業後、公認会計士に合格。資格学校「TAC」の財務諸表論講師、監査法人トーマツ、ドリームインキュベータを歴任後、2012年に加瀬会計事務所(現:アカウンティングフォース税理士法人)に参画。企業のIPO支援や戦略コンサルティングなどの経験を活かして活動している。