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【金ロー】『ラピュタ』は滅びの物語ではない? 宮崎監督が描く「理想郷」とは

夏の終わりを告げるように、宮崎駿監督の人気作『天空の城ラピュタ』がテレビ放映されます。すでに何度も観ているはずの『ラピュタ』ですが、年齢を重ね、実社会を経験することで、子どもの頃とは違った印象を感じる視聴者も多いのではないでしょうか。スタジオジブリの記念すべき第1作、『ラピュタ』の魅力を掘り下げてみたいと思います。

ラピュタにたどり着いたパズーとシータが見たものは……

『天空の城ラピュタ』のパズーとシータ。2019年4月から「LINE マンガ」でコミカライズ版も配信されている (C)1986 Studio Ghibli
『天空の城ラピュタ』のパズーとシータ。2019年4月から「LINE マンガ」でコミカライズ版も配信されている (C)1986 Studio Ghibli

「バルス!」の呪文でおなじみ、宮崎駿監督の劇場アニメ『天空の城ラピュタ』(1986年)が、2019年8月30日(金)の「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)で21:00からオンエアされます。劇場公開から33年が経ち、地上波テレビでの放映も過去16回を数えますが、近年はSNSの普及で、ネットユーザーたちがテレビでの進行を実況しながら盛り上がるという楽しみ方も定着しつつあります。

 SNS世代をはじめ幅広い層に人気の『ラピュタ』ですが、1985年に設立された「スタジオジブリ」の第1作だけに、SFファンタジーとしてもアニメーションとしても、非常に高い完成度を誇っています。空に浮かぶ伝説の城ラピュタを探す少年パズー(声:田中真弓)と空から降りてきた不思議な少女シータ(声:横沢啓子)の大冒険に胸が躍ります。

 宮崎監督ならではのユニークなメカの数々も見ものです。空中海賊ドーラ(声:初井言榮)たちが乗る空中母船タイガーモス号や、羽虫のように飛ぶ小型航空機フラップターの活躍にワクワクします。

 宮崎監督が「照樹務」の名義で脚本・演出したTVアニメ『ルパン三世』(日本テレビ系)第2シリーズの最終話「さらば愛しきルパンよ」に登場したロボット兵に再び活躍の場を与えるなど、宮崎監督が初の完全オリジナル作品にありったけの情熱とアイデアを注いでいることがうかがえます。

 産業革命を時代背景にしたスチームパンクとしての面白さはもちろん、前作『風の谷のナウシカ』(1984年)やテレビシリーズ『未来少年コナン』(NHK総合)でも描かれた、「行き過ぎた科学の進歩は世界を滅亡へと招く」というメッセージ性と娯楽性とのバランスが上手くとれたものになっています。

 さらに、大人になって『ラピュタ』を見直すと、宮崎監督のユートピア観、理想郷への想いが投影されていることも強く感じられるのです。

 天空に浮かぶラピュタは、非常に高い科学力を誇った古代文明人が、地上の争いから逃れるために建造した理想郷です。しかし、進歩しすぎた科学はラピュタで暮らす人々の生命力を奪ってしまいました。パズーとシータが苦労してラピュタにたどり着いたときには、ロボット兵しかいない無人の廃墟となっていたのです。

 争いのない平和な理想社会・ユートピアで暮らすことに、多くの人は憧れます。でも、高度に完成された理想社会は、理想の実現と同時にディストピアと化してしまうのです。ユートピアとディストピアは背中合わせの関係にある。そんな皮肉な現実を、若いパズーとシータは知ることになるのです。

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