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【金ロー】『ラピュタ』は滅びの物語ではない? 宮崎監督が描く「理想郷」とは

流浪の天才アニメーターが出会った「ボスキャラ」

『ラピュタ』で活躍する女海賊ドーラ。バンダイ「想造ガレリア」シリーズ第2弾 事前登録キャンペーンより(画像:バンダイ)
『ラピュタ』で活躍する女海賊ドーラ。バンダイ「想造ガレリア」シリーズ第2弾 事前登録キャンペーンより(画像:バンダイ)

 天空をさまよい続けるラピュタを守るロボット兵は、どこか宮崎監督のそれまでの半生を思わせるものがあります。東映動画(現・東映アニメーション)でアニメーターとしてのキャリアをスタートさせた宮崎監督は、アニメーターの待遇改善を求めて組合運動に参加していました。その後、東映動画を退職した宮崎監督は、Aプロダクションへと移り、TVアニメ『ルパン三世』の第1シリーズを手掛けることになるのです。

 さらには、ズイヨー(後の日本アニメーション)でTVアニメの最高峰とも称される『アルプスの少女ハイジ』(フジテレビ系)、テレコム・アニメーションで劇場デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)、そしてスタジオジブリの前身となるクラフトでブレイク作『風の谷のナウシカ』を作ります。

 それこそ、国内のアニメスタジオを放浪しながら傑作アニメの数々を残したのです。宮崎監督にとって、スタジオジブリはようやく手に入れた理想のホームグランドだったのです。

 そんなスタジオジブリの設立を語る上で忘れてはならないのが、徳間書店の徳間康快社長(当時)でした。徳間社長は、宮崎監督のあふれる才能に早くに気づき、ジブリへの出資を決めた大プロデューサーです。日中合作による大作『敦煌』(1988年)などのスケールの大きな映画を製作する一方、徳間書店が発行する「週刊アサヒ芸能」は芸能スキャンダルや暴力団の抗争記事を積極的に掲載しました。

 徳間社長は「清濁併せ呑む」ではなく、「濁濁併せ呑む」と自称する豪快な人物でした。世の中はきれいごとだけでは動かないことを、誰よりも知っていたのです。

 さまざまなスタジオを放浪してきた宮崎監督にとって、ジブリの初代社長となった徳間社長は頼もしいボスだったに違いありません。宮崎作品では『ラピュタ』では女海賊ドーラ、『千と千尋の神隠し』(2001年)では魔女の湯婆婆など、善悪の二元論では語れない存在感たっぷりなボスキャラが登場します。「濁濁併せ呑む」と豪語した徳間社長と重なるものを感じさせます。

 徳間社長は2000年に他界していますが、徳間社長が製作総指揮としてクレジットされているジブリ作品『耳をすませば』(1995年)、『もののけ姫』(1997年)、『千と千尋』はどれも高い評価を得ています。宮崎監督にとって、とても大きな存在だったことは間違いないようです。

 結局のところ、理想郷/ユートピアとは特定の場所を指すのではなく、人と人との出会いから生まれ、そこから築いていくものなのかもしれません。『天空の城ラピュタ』は、決して滅びの物語ではなく、人と人とが出会い、新しい可能性が広がっていく物語だといえそうです。

(長野辰次)

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