最初からイレギュラー? ヒーローのいない『ウルトラQ』のvs怪獣戦
今さらですが『ウルトラQ』には巨大ヒーローは登場しません。いったい、どのようにして怪獣を倒していたのでしょうか。ウルトラマン不在時代の「vs怪獣」戦歴を振り返ります。
ウルトラマン不在の『ウルトラQ』は……「地球」が武器だった?
1966年7月17日放送開始の『ウルトラマン』以降、ウルトラ戦士が我々人類を大怪獣、宇宙人の魔の手から守ってくれるようになりましたが、前作にして原点の『ウルトラQ』にはウルトラマンのようなヒーローが登場しません。いったい、どのようにして怪獣たちを倒していたのでしょうか。
人類が怪獣に立ち向かうには『ウルトラマン』の科学特捜隊のような防衛チームの存在が不可欠のように思えますが、『ウルトラQ』ではそうしたプロフェッショナルが組織されているわけではなく、『ゴジラ』同様に自衛隊が出動します。が、これも毎回ではありません。主人公はパイロット万城目淳、その助手の戸川一平、そして新聞記者の江戸川由利子です。「戦闘」に関しては素人の3人が、果敢にも事件解決に身を乗り出すのです。
具体的に、きり良く第10話まで一気に見ていきましょう。まず第1話「ゴメスを倒せ!」では、怪獣・ゴメスと怪鳥・リトラが出現します。大暴れするゴメスを倒したのは……人類ではなく怪鳥リトラでした。そしてリトラもまた、戦闘によって受けたダメージで死亡するのです。
続く第2話「五郎とゴロー」に登場した巨大猿ゴローは、倒されることなく、眠り薬を混ぜた牛乳で大人しくなります。第3話「宇宙からの贈りもの」に登場したのは、ナメクジそっくりな火星から来た怪獣ナメゴンでした。現実のナメクジ同様に塩分が弱点であり、海水に落下してあえなく溶解します。続く第4話「マンモスフラワー」では、太古の巨大吸血植物「ジュラン」が丸の内のど真ん中に出現します。ここにきて自衛隊が本格動員され、大規模な駆除作戦が決行されたのです。
続いて第5話「ペギラが来た!」の、ペギラは、冷凍光線を吐き出す恐ろしい怪獣ですが、「ペギミンH」という化学物質が弱点であることが判明します。この物質を搭載した気象観測ロケットを発射し、追い払いました。第6話「育てよ!カメ」は、浦島太郎という少年が育てた亀が99cmに巨大化してガメロンとして珍騒動に発展する、不思議な回です。ガメロンは少年と竜宮城にいきますが、そこにいた乙姫の操る「怪竜」の炎にやられてしまいました。
第7話「SOS富士山」に出てきた岩石怪獣のゴルゴスは、富士山麓で成長した元野生児と警察官のタッグにより、「核」を破壊することで、討伐に成功します。第8話「甘い蜜の恐怖」では、巨大もぐらの「モングラー」が暴れるも、これでもかというほどの自衛隊の砲撃で地中に追い込み、火山地層にぶつかって死亡しました。
第9話「クモ男爵」では、巨大な2匹のタランチュラが出現します。万城目たちがナイフで刺殺したり車でひき殺したり、現実的な方法で退治されました。第10話「地底超特急西へ」に登場した人工生命 M1号は、自分自身で引き起こした大爆発により、宇宙空間を漂い続けるという結末を迎えます。
ペギラのように科学の力を結集させて退治するパターンもありますが、溶岩や海水など地球の自然を武器に勝利を収めることが多いのが特徴です。超自然現象に対し、知恵と自然も利用して立ち向かうことこそ、人類の叡智なのかもしれません。
(片野)