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【秋ドラマ決定】今改めて考えたい、『孤独のグルメ』が愛され続ける2つの理由

今なお珍しい、「お酒が飲めない人も楽しめる」グルメ作品

食事どころを探す井之頭五郎を表紙に描いた、原作『孤独のグルメ【新装版】』(扶桑社)
食事どころを探す井之頭五郎を表紙に描いた、原作『孤独のグルメ【新装版】』(扶桑社)

 こういった“大人の食”をテーマにした作品では、「お酒がすすむ」「お酒がほしくなる」という表現が多く登場します。そしてお酒を飲むことを前提としたメニューのチョイスがなされることもしばしばです。これは、お酒を飲む人にとっては魅力的に映るのでしょうが、飲めない人にとっては、どこか遠い存在に感じてしまいがちです。

 しかし井之頭五郎はお酒が飲めないため、そういったお酒のためのチョイスは一切しません。純粋に「食事」を楽しむためにお店を選び、注文していきます。この感覚が、飲めない人にとってはとても嬉しいのです。作中で度々描かれる、周囲からの“お酒を飲むのが前提の発言”に苦笑する場面の井之頭も、飲めない人が抱えるもやもやとした気持ちを代弁してくれているように感じます。このように、男性が食事をひとりで心から楽しみ、それでいてお酒を飲まない作品は、グルメマンガが急増している昨今でも、かなり珍しいのではないでしょうか?

 ドラマ版では、後半に原作者である久住昌之さんが実際に登場したお店を巡り、そこのメニューを堪能するというパートがあります。井之頭五郎はお酒をまったく飲みませんが、久住さんはお酒が大好きで、お酒と一緒に料理を楽しみます。ドラマ版は、「お酒を飲む人と飲まない人両方の視点から楽しめる」という、原作とはまた違う魅力もあるのです。

 10月からの「シーズン8」でも、きっと変わらない安定した井之頭五郎を、そして久住昌之さんを見られるはず。展開が目まぐるしい作品もスリルや迫力があって良いですが、こうして安心して見られる作品も心のオアシスとして必要ですよね。これからどんな仕事っぷりが、そしてどんな孤独のグルメっぷりが見られるのか、今からとても楽しみです。

(きこなび 月乃雫)

【画像】たった2冊のマンガから広がったドラマ『孤独のグルメ』を振り返る(5枚)

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