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『ガンダム』宇宙移民が連邦を憎むのはナゼ? 軋轢を生んだ歴史的背景

アニメ『機動戦士ガンダム』の宇宙世紀では、長年に渡り地球連邦政府とスペースノイドとの対立が描かれています。ところが、劇中描写では地球連邦政府が極端な弾圧を行っている様子はほぼ見られません。どうしてスペースノイドは連邦に反感を持っているのでしょうか。

不満があるのはサイド3だけ?

ジオン・ズム・ダイクンの死から始まる物語が描かれる『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』 (C)創通・サンライズ
ジオン・ズム・ダイクンの死から始まる物語が描かれる『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』 (C)創通・サンライズ

 アニメ『機動戦士ガンダム』に登場する「宇宙世紀」は、スペースコロニーへの移民開始後に西暦から移行された紀年法です。

「人類はひとつになれるという事実を普遍化し、協調し、一個の種として広大な宇宙と向き合う」という祈りを込めて「単なる宇宙世紀(ユニバースセンチュリー)ではなくあえて普遍的世紀(ユニバーサル・センチュリー)と言う表記にした」とされています。

 その高邁な思想に反して、宇宙世紀は初代首相であるリカルド・マーセナスが、宇宙世紀元年に暗殺されるなど、「人類はひとつになれない」スタートとなります。

「ガンダム」で描かれる宇宙世紀の大半が「腐敗した地球連邦政府」に対して、独立を求めたスペースノイド側の勢力が武力行使する構図となっています。となれば、最初に描かれたジオン公国の独立戦争以前でも、地球連邦に対する不平不満が渦巻いているはず。どうしてそこまで連邦は憎まれているのでしょうか。

 ジオン公国のギレン・ザビはデギン公王に「地球連邦の絶対民主制が何を生み出しましたか。官僚の増大と情実の世を生み、あとはひたすら資源を浪費する大衆を育てただけです」と発言していますから、地球連邦の政治制度は民主主義国家なのでしょう。

 その連邦政府には「地球連邦議会」があり、上院と下院が存在するようです。そして「総会」の決議を経て政策が実行されているようです。最高指導者は大統領ですが、実権は首相が持っているとされています。

「いつまでか」はわかりませんが、宇宙移民には、地球連邦政府への参政権が存在しないという資料もあります。宇宙世紀0050年には、総人口110~120億人の内、90億人が宇宙移民となっており、これが本当なら、民主主義国家で総人口の大半が参政権を持たないことになりますから、驚くべき話です。

「参政権がない」がどの程度なのか不明ですが、ジオン公国の大義名分を見るに、スペースノイドの政治的権利が不平等という事実はあるのでしょう。断片的な設定から「なぜ連邦が敵視されたのか」を推理してみます。

 まず、地球連邦の成立目的は「地球環境が極度に悪化したため、地球に住む人たちを強制的に宇宙に移民させる」というものです。

 しかし、現代の私たちが「先進的なスペースコロニーに移民できる」と言われても、「隕石でもぶつかったら」「コロニーが故障して重力が止まったら」「物資生産プラントが壊れたら」など、不安だらけだと思われます。

 そうした反対派をなだめ、宇宙に強制移民させるには「極端に税金が安い」とか「先に手を上げた住民ほど、特別な権利が持てる」といった「特権」が付与されたと考えられます。

 また、連邦政府は領土問題や民族問題を「人類はひとつになれる」宇宙世紀の理念で解決しようとしたはずです。領土問題は「コロニーを新規建設すればしただけ、領土が広がる」のですから、解決できます。民族問題も、同じ民族を同じコロニーに集めれば解決に向かうでしょう。

 ただし「同じ民族をコロニーに集める」と、意見の多様化は失われがちですし、政治的主張が過熱・原理主義化して、先鋭化する危険性もあるでしょう(ジオンがそうであるように)。

 こうしたことから、宇宙移民の初期において「スペースノイドは地球連邦政府の参政権を持たない」という制度設計が為されたのかもしれません。スペースノイドに参政権を与えれば「民意で地球からの移民を中止する」「特定民族の利益だけを追求した宇宙開発を進める」といった、地球連邦の設立趣旨に反した政治的決定がなされる可能性も高いからです。

 一方で各サイドには議会があり、そこへの参政権はあるようですから「連邦議会の参政権はないが、各サイドの自治政府への参政権はある」が初期の地球連邦のあり方なのでしょう。だとするなら、自然に、自分が所属するサイドを「国」と感じられるはずです。各サイドには10~20億人の人口がいるという設定ですから、現実世界の大国よりも、ずっと大きな政治勢力です。

 であるなら「民族なども近いサイドごとに、独立国家となって権益を守るべき」と考えるのは自然で、それがジオン・ズム・ダイクンも提唱した「宇宙移民者による国家建設思想」コントリズムでしょう。前述したように、筆者は「初期の宇宙移民者には特権が与えられた」と推察しますが、その特権階級が「ザビ家」のような名家になり、コントリズムと結びつくのは自然な流れです。

 ガンダムの政治勢力が「名家の血を引く特権階級」に支えられている傾向が強いのは、宇宙世紀の最初に作られた政治的構造に起因しているとも考えられるわけです。

 地球連邦政府から見れば、このような政治的独立の動きは容認できないでしょう。せっかく国家を廃止し、人類をひとつにしたのに、国家間対立を復活させるからです。

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