【追悼】15年間愛された園田小波先生の『チョコミミ』 珠玉の恋愛エピソード
「初恋の切なさ」思い起こさせるエピソードも

『チョコミミ』はいつ、どこから読んでも笑わせてくれるビタミンのような存在であり、また初恋の切なさを思い出させてくれる物語でもあります。私がすごく好きなお話をひとつ紹介させて下さい。
コミックス第2巻収録の「恋唄」。チョコと両思いでありながらも、自分の「好き」の気持ちを深くは理解していないアンドリュー。彼の視点のエピソードです。
アンドリューの父親は酔って機嫌が良くなると、ある歌を歌います。その歌は、何十年も前の歌謡曲で、恋人を月に例えたラブソング。アンドリューはその歌を聞くたびに「古臭い奇妙な歌」だなと思っていました。
♪「私の暗闇を照らす光よ あなたはまるで月のよう 私の道しるべ」
いつものように父親が酔ってこの歌っているのを尻目に、夜のコンビニに出かけたアンドリューは、弟を塾に迎えに行く途中のチョコに出会います。
お風呂に入ったばかりなのか、髪を下ろしたチョコは、少しいつもと感じが違う……雨が降るから傘を届けに行くんだというチョコ。空を見上げ「雨の匂いがする」と言う、チョコの大人びた表情。
月の出てない空と地面ともわからない暗い夜の世界でチョコが手に持つ、黄色い傘。その黄色い傘を丸く広げたチョコを想い、アンドリューはあの父親の歌を思い出して……。
♪「あなたはまるで月のよう」
チョコと別れたアンドリューは初めて、ラブソングを口ずさむのでした。
2019年8月、作者の園田小波先生がにご逝去されたとを知った時は、本当に驚きました。
何でもないかもしれない毎日も、『チョコミミ』にかかれば、毎日がワンダーランド! 先生の作品が大好きです。心より御冥福をお祈り申し上げます。
(別冊なかむらりょうこ)