ナウシカもアシタカも「根クラ」だった? 宮崎駿監督がジブリキャラに込めた真意とは
ジブリ作品のなかで特に人気の高いナウシカとアシタカについて、かつて宮崎駿監督は「根クラ」と発言していました。その発言の真意はどのようなものだったのでしょうか。
宮崎駿監督のなかにいた「暗い少年」
『風の谷のナウシカ』のヒロイン、ナウシカと『もののけ姫』の主人公、アシタカはどちらも多くのファンに人気のあるキャラクターです。そんなふたりのことを、宮崎駿監督が過去に「根クラ」と発言していたことがありました。その発言の真意とは、いったいどんなものなのでしょうか。監督自身の言葉からひもといていきます。
1984年に公開された映画『風の谷のナウシカ』は、スタジオジブリの前身となるトップクラフトが制作し、宮崎駿監督の名前を一躍有名にしたアニメ作品です。ヒロインであるナウシカは「風の谷」の族長であるジルの娘で、武人としての猛々しさとあらゆる生物に対する博愛をあわせ持つ少女です。
先日、2023年7月7日に「金曜ロードショー」で『風の谷のナウシカ』が放送された際にも、Twitterなどで多くのファンからナウシカへのコメントが投稿されました。「恐れられる蟲を人間と同じように愛するところが魅力」「優しさだけでなく強さと少しの残酷さを持っているのもステキ」など、映画公開から40年近く経った今でも、ナウシカが愛されていることがわかります。
一方、1997年に公開された映画『もののけ姫』は、タタリ神によって呪いを受けた少年・アシタカが、山犬に育てられた少女・サンや、タタラ場という集落に暮らす人々と出会い、「人と自然が共存することの難しさ」に立ち向かう物語です。
アシタカは多くのファンの間で「ジブリキャラのなかでいちばんイケメン」と言われるほどの人気を集めています。森の神々と人間という、異なる存在をどちらも尊重する姿勢が、多くの人びとから好感を得ている理由ではないでしょうか。
ジブリキャラのなかでも特に高い人気を誇るナウシカとアシタカについて、なぜ宮崎監督はふたりのことを「根クラ」と評価したのでしょうか。その答えは2013年4月10日に発売された『ジブリの教科書1 風の谷のナウシカ』(文藝春秋)のなかで宮崎監督本人の口から語られていました。
同書によれば、宮崎監督がアシタカを生み出したのは「「マイナス」なものを主人公に背負わせたらどうなるのか?」という想いからだったそうです。
これまでは、明るいキャラクターで映画を作ってきたという宮崎監督ですが、宮崎監督自身の心のなかには「明るい少年」ではなく、「自意識の強い、暗い少年」が存在していたそうです。
そんな自分の内面を外に出してみよう、と思って生み出されたのが、アシタカというキャラクターでした。さらに宮崎監督は同書のなかで、アシタカのことを「とんでもないというか、あまりやらなかったキャラクター」だと発言しており、彼の誕生は宮崎監督にとって挑戦的な試みだったことがわかります。
宮崎監督は「僕自身も根クラだから、同じ根クラのほうが描きやすい」と語っています。また、「寝クラのほうが優しい」とも述べており、「根クラ=悪いイメージ」ではない、ということでしょう。