漫画『僕の心のヤバイやつ』が描く「自意識の壁」 悶絶級にヤバい!
先日結果が発表された「次にくるマンガ大賞2019」。1位作品ももちろん注目ですが、他のノミネート作にも魅力的な作品が揃っています。マンガレビューライターの小林聖さんが、いち押しの作品『僕の心のヤバイやつ』について解説します。
『僕の心のヤバイやつ』は「陰キャ×陽キャ」のラブコメ
ユーザー投票によるマンガ賞「次にくるマンガ大賞2019」が2019年8月22日(木)に発表されましたが、1位に届かなかった作品のなかにも、読者の心に刺さるマンガが多くあります。そのなかでも『僕の心のヤバイやつ』(桜井のりお作)をイチ推しするのが、マンガレビューライターの小林聖さん。同作品の「ヤバさ」について、解説してもらいます。
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2019年8月に、「次にくるマンガ大賞2019」の審査結果が発表されました。こうしたアワードはどうしても1位の作品に注目が集まりますが、ノミネート作品はどれも熱いファンの声に支えられているものばかり。惜しくも1位を逃した作品のなかにも、魅力的なマンガがたくさんあります。
筆者がいま個人的に「悶絶」しているのが、今回「Webマンガ部門」で第5位に選ばれた『僕の心のヤバイやつ』です。
本作は14歳の中学生、市川京太郎を主人公としたラブコメディ。中二病をこじらせかけており、「いつかクラスメイトを殺してやろう」と妄想するようなタイプの彼が、ふとしたきっかけで雑誌モデルをやっている学校一の美人・山田杏奈と交流を持つようになり、徐々に距離が近づいていく……という物語です。
いわゆる「陰キャ男子」と「陽キャ女子」のラブコメといってしまえばそうなのですが、この作品の凄まじさは、市川と山田を通して読者の“心のヤバいやつ”を突きつけてくるところにあります。
『僕の心のヤバイやつ』にはマンガらしいデフォルメもあります。絵柄もかわいい系で、キャラクターとしてもヒロイン・山田杏奈は美人で人気者だけど、実は天然で食いしん坊……といった一種のベタさがあります。いわゆる萌えラブコメとしても十分楽しめる作品です。
しかし、そういうマンガっぽい世界観でありつつ、一方で物語や心理描写は実に生々しいのがこの作品の強烈さなのです。