マグミクス | manga * anime * game

ナウシカが長年愛されるのは「モデル」たちのおかげ? 宮崎監督が参考にした作品とは

ナウシカア、虫愛づる姫君がナウシカに与えた影響とは?

「虫愛づる姫君」が登場する『ワイド版 マンガ日本の古典7-堤中納言物語』(中央公論新社)
「虫愛づる姫君」が登場する『ワイド版 マンガ日本の古典7-堤中納言物語』(中央公論新社)

「虫愛づる姫君」は、他の姫たちが「蝶や花」など美しいものを好んでいたことに対し、毛虫などの虫の生態を面白がり、飼っていたという変わり者の姫でした。当時は女性が年頃になると、眉を抜いてお歯黒を塗るのが普通だったそうですが、姫は眉毛の手入れもお歯黒も塗らずそのまま過ごしており、風変りな姫だと召使たちにまでバカにされていたのです。

『スタジオジブリ物語』では、ナウシカアと虫愛づる姫君は「姫として生まれながらも、優れた感受性ゆえに変わり者として生きざるをえなかった人物」だといわれています。どちらにも共通しているのは、類まれな美しい心を持っている、ということでしょう。

 ナウシカアは前述の『オデュッセイア』のなかで、漂着したオデュッセウスに「わたしらの国に来られたからには、気の毒な人が救いを求めてくれば当然してあげねばならぬように、着るものはもちろん、その他何事であれ不自由はさせません」(松平千秋訳『オデュッセイア』より引用)と話します。

 また、『堤中納言物語』で虫愛づる姫君は、召使たちが虫を気味悪がることに対し「世の人々が、花よ蝶よともてはやすのは、あさはかでおかしいわ。人というのはまじめな気持ちがあって、物の実体をつきとめることこそ、心ばえがあらわれてよいのです」(三角洋一訳『虫めづる姫君』より引用)と語っています。

 これらの人物の特徴は、人にも蟲にも分け隔てなく、博愛の精神で接するナウシカのキャラクターに大きな影響を与えているといえるでしょう。

 このように、ナウシカというキャラクターには、多くのモデルが存在しています。現在でもナウシカが多くのファンに愛されているのは、キャラクターデザインや作中の言動、声優・島本須美さんの演技はもちろん、モデルとなった人物たちの魅力がいくつも懸け合わさっているからなのかもしれません。

(LUIS FIELD)

1 2 3