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任天堂、新作『ゼルダ』大ヒットも先行きに不安? マリオ新作ラッシュの背景は

Switchのヒットにより、任天堂は大きな飛躍を見せました。また、その好調な展開を支えるべく、ここ1年は人気シリーズが逐次投入され、実績と話題性作りを両立。安定した業績も残していますが、それゆえに一抹の不安も拭えません。

大作の成功と引き換えに生まれる、数年のブランク

今年のNo.1ソフトとの呼び声も高い『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』
今年のNo.1ソフトとの呼び声も高い『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』

 時代ごとにユニークな提案を繰り返し、ユーザーに愛されるゲーム機とゲームソフトを作り続けてきた任天堂。ここ数年はNintendo Switch(以下、Switch)が好調に推移し、業界の最前線で譲らぬ活躍を見せています。

 直近の決算(2023年3月期)では減収減益となりましたが、これはSwitchの展開が安定期に入った影響も無視できません。買い替えや2台目といった需要を別にすれば、ゲーム機は普及すればするほど、未所持の人が少なくなります。つまり潜在的な新規ユーザーが減るため、どこかで減少に転じるのは当たり前。普及が広まったと考えれば、決して悪い話ばかりではありません。

 ハード売上高比率は前年比で下がっているものの、任天堂が発売元となる自社ソフトの売上高比率やデジタル売上高比率は増加しています。また自社ソフトウェアの販売本数は、Switch発売以来3番目という高水準を保っています。発売から6年が経過したゲーム機とは思えないほどの躍進ぶりです。

 任天堂が好調な理由は、ユーザーに支持される人気作が数多くあるため。特に、任天堂が手がけるゲームはSwitchでしか遊べないため、ここが非常に大きな強みになります。

 例えば、2023年5月にリリースされた『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は、発売からわずか3日間で1000万本(世界累計販売本数)もの大ヒットを記録しました。これだけでも、任天堂がどれだけ順調か、想像に難くありません。

 任天堂は、『ゼルダの伝説』などの自社IPをふんだんに活用し、素晴らしい成果を遂げました。ですが、現在の好調を支えているIPの逐次投入は、今後の展開に不安を感じさせる一面があることも否定しきれません。

●人気シリーズの完全新作は、年単位の開発がもはや必然

 ゲームの開発にかかる時間は、その内容や開発の規模、工数などによって大きく異なり、一概にどれくらいかかるとは言えません。しかし、ゲーム機の性能向上に合わせて開発規模も増加の一途を辿(たど)っており、人気ゲームの完全新作だと数年がかりのプロジェクトになることもしばしば。

 注力した分だけ売れるとは限りませんが、世界的な大ヒットを遂げたゲームを振り返ると、時間や労力をかけた大作が多いのも事実です。『グランド・セフト・オートV』や『The Elder Scrolls V: Skyrim』などはゲーム史に残るほどの大ヒット作ですし、先ほど名前を挙げた『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』もまさにそのひとつです。

『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』は発売直後から早くも見事な成果を遂げましたが、この成功に辿(たど)り着くために費やした期間は計り知れません。

 本作が「『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の続編」として初めて発表されたのは、2019年6月のこと。この時点から数えても約4年後の発売となりましたが、開発自体はそれ以前から始まっていたはず。それだけの年月をかけ、ようやく「3日間で1000万本」に漕ぎつけられたのです。

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』から『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』までの間、『ゼルダの伝説』シリーズからはいくつものゲームが出ました。しかし、過去作のSwitch版や他社IPとのコラボ作品など、いずれもメイン級の完全新作ではありません。

 開発者にせよ開発費にせよリソースの上限は決まっており、メイン級の完全新作をいくつも並行して制作するのは稀です。むしろ開発規模の増大から、注力してひとつの作品を作り上げる傾向は強まっているとも言えます。

 こうした事情から、人気IPにおけるメイン級の新作は、一度リリースしたらしばらく間が空くのを避けられません。こうした通例に則って考えると、メイン級の『ゼルダの伝説』完全新作は早くても数年後、もしかしたらSwitchの後継機向けに出るのかもしれません。

●IP投入による好調ぶりが、空白期への懸念も生む

 売りとなるゲームが『ゼルダの伝説』しかなければ、数年間の空白は大打撃でしょう。しかし任天堂は、人気の高いIPをいくつも抱えています。それぞれでメインとなる新作のリリース時期を見計らい、発売日を被らせないことで、常に話題作を提供する状況を維持。そして年間を通して安定した業績を成し遂げ、現在の好調を支える一因としてきました。

 ですが、近年における任天堂IPの動きを見ると、華々しい活躍が特に続いたため、その反動から多くのIPが空白期に入る恐れがあります。果たしてどんな人気シリーズが、いつ頃活躍し、空白期が訪れる可能性を持つのか。ここからは、任天堂の各IPを振り返ります。

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