ジブリも標的に? 過激じゃないのに意外な理由でクレームが殺到した国民的作品
下品でもなければ、ハレンチでもない……。一見クレームとは縁のなさそうなアニメでも、意外な理由で苦情が殺到した例があります。たとえばスタジオジブリの不朽の名作『となりのトトロ』もそのひとつでした。いったい何が原因だったのでしょうか。
みんな大好きなアニメ映画の初放送で苦情殺到!?

[i]230720-COMPLAINTANIME-01.jpg,絵本「あんぱんまん やなせたかしのあんぱんまん1973」(フレーベル館)
アニメ『クレヨンしんちゃん』といえば、視聴者から頻繁にクレームが寄せられるということで有名です。2002年に行われた「子どもに見せたくないテレビ番組ランキング」では1位を獲得し、それ以降も同ランキングで18年連続ベスト5に輝いていました。
『クレヨンしんちゃん』は主人公・野原しんのすけが下品な行動を連発する作品なので、保護者の反応も何となく理解できるでしょう。しかし、その他の国民的アニメ作品では、下品でもハレンチでもないのに苦情が殺到してしまった例も少なくありません。
たとえば、今やスタジオジブリの代表的作品である『となりのトトロ』にも、苦情電話が鳴り止まなかった逸話があります。一見クレームとはほど遠い作品に思えますが、問題視されたのは物語の内容ではなく放送された時間帯でした。
2023年に発売された『金曜ロードショーとジブリ展 公式図録』によると、『金曜ロードショー』で『となりのトトロ』が初めて放送された1989年4月28日には、「こんな遅い時間に放送したら、子供が寝られないじゃないか」というクレームが殺到したそうです。
というのも当時は、夜の9時からアニメを放送するというのは異例中の異例でした。また、作中ではトトロがなかなか現れないため、そのシーンだけでも見ようと待っていると22時を過ぎてしまいます。そういった理由から、当時は苦情電話が鳴り止まなかったそうですが、2回目以降の放送から次第にクレームが減っていったそうです。
クレームが減少した理由について、スタジオジブリ作品で製作担当などを務めてきた日本テレビの奥田誠治さんは「一緒に見ていたお父さんお母さんも、おもしろい映画だと思ってくれたんでしょうね」と、語っていました。
その他、誰もが知る国民的ヒーロー・アンパンマンにも、原作の絵本の方にクレームを寄せられた過去があります。
アニメのアンパンマンは、お腹を空かせた人がいれば顔の一部を分け与えますが、原作となったやなせたかし先生の絵本のアンパンマンは自らの顔を差し出して、直にかぶりつかせていました。この事実は、アニメ『それいけ!アンパンマン』と同じ日本テレビ系の『1周回って知らない話』で明かされています。ときに顔を全部食べられ、「首なし」のまま空を飛ぶこともあるという衝撃的な内容だったため、当時の保護者からは出版の中止を求めるクレームが殺到したそうです。
たしかに顔がないまま飛行するアンパンマンのイラストは不気味で、ネット上でも「アンパンマンの顔なしシーンは割とトラウマ」「衝撃的な絵面すぎる」「子供のとき、顔なしで飛ぶシーンを初めて見たときは数秒固まったわ」といった声も上がっていました。
「最も長く放映されているテレビアニメ番組」としてギネス記録を更新し続けている『サザエさん』も、エピソードが多い分クレームが出たことも少なくありません。なかでも有名なのが、ネット上で「マスオサンタ事件」と呼ばれている回です。
問題になったのは、2000年12月24日放送の「サンタさんとお約束」というクリスマスのエピソードでした。このエピソードは、タラちゃんが「サンタさんとの内緒」といってクリスマスに何が欲しいのか教えてくれず、さらにサンタさんにひと目会いたいタラちゃんが当日なかなか寝なくて、マスオとサザエがプレゼントを渡すのに難儀する……といった内容でした。直接的にそうは言わないものの、「サンタの正体が両親である」ことを暴露するものだったため、視聴者から「子供の夢を壊さないで」と抗議が殺到したのです。
また2010年6月13日放送の「父さん若色ブルゾン」というエピソードでは、清掃員に間違われた波平が「けしからん!不愉快極まりない」と憤慨しました。この「職業蔑視」とも受け取れる発言が物議を醸し、当時の「週刊女性」でも「サザエさんクレーム殺到 波平まさかの大失言」との見出しが電車の中吊り広告に出るなど、波平の失言が取り上げられてしまいます。国民的アニメでも、いや国民的アニメだからこそ、細かいセリフにも気を遣わなければいけないと分かる事態となりました。
(ハララ書房)