【漫画】男ふたりの潮干狩り 「無駄」のなかから「真の豊かさ」に触れる貴重な体験?
「低温」のテンションで活動しているどてらぞぬさんが、先輩とふたりで潮干狩りに行った日のエピソードを描いています。現実的には店でも簡単に購入できる貝。あえて海で探すという行為は、作者にとって「意味のある無駄」だったようです。
アサリはスーパーで買えるのになぜ?

どてらぞぬさん(@zonu_summer)が、先輩と海へ行って潮干狩りを体験したエピソードを公開しました。どてらぞぬさんは、110話を超える『週間ぞぬ通信』というシリーズで、主にエッセイマンガを発表しています。その作風は、基本的にテンションが低めな「低温」であることが特徴です。
この日のどてらぞぬさんの潮干狩りの体験では、雄大な海の景色に触れて感動したり、アサリを見つけて「生き物としての根幹的なうれしさ」を感じたりといった心の動きがありました。同時に、砂の重さに苦労したり、何となく徒歩で帰ることにして10km以上を歩くという「苦行」を経験したりと、決してスマートな旅ではなかったようです。
このエピソードを描いた作品に「いいなぁ。最後の失敗も失礼ながら笑ってしまいました」「こういうの好き。意味のある無駄っての」「ぞぬ氏ワールド」といった感想が寄せられています。そのほか、自身の体験を振り返って思い出を語る読者も多く見られました。作品のTwitter投稿には、2300件を超えるいいねがついています。
作者のどてらぞぬさんに、お話を聞きました。
ーーどてらぞぬさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。
今僕が描いているエッセイマンガは、大学時代に描き始めたんです。大学の学園祭に出す商品として、旅行記マンガを描こうとなりまして……。友人とふたりで合同誌を描いたんですよ。それがきっかけです。
それからちょくちょく自身の体験や思い出をマンガにするようになりまして。少し真剣にやってみようと思って始めたのが『週間ぞぬ通信』だったんです。それが案外、多くの人に読んでもらえるようになった……という感じですね。僕が一番驚いていますよ、はい……。
ーー作中では「何でいきなり潮干狩りに?」という質問に「昔からの貝を掘り起こしたい欲求」というやや曖昧な回答がされています。そのほかに何か理由はなかったのでしょうか?
誰しも、何となく興味はあるけれど、それを実際に行動に移すほど元気じゃない……ってものが、多分あると思うんです。僕にとって、それのひとつが「潮干狩り」だったんですよ。……何だか、面白そうじゃないですか。地面を掘って貝を見付けるなんて……。原初的な好奇心って感じがしますよね。虫取りとか、魚釣りとか、潮干狩りとかそういう類のものって……。
あと、何かこう……土で汚れたかったんですよ。家でパソコンの前で絵を描いてるだけじゃ、土の感覚なんて忘れてしまいますから。実際に海や土、風とかに触れて……自然物に対しての解像度を上げようと思った、というのも理由ですかね……。

ーーこの日の体験は最終的に「良い思い出」になりましたか? それとも失敗・反省点のほうが印象深い1日でしたでしょうか?
良い思い出になりましたね。失敗や反省点はもちろんありますが、それも含めて良い旅でした。合理的で無駄のないスマートな旅も良いですが、僕は非合理的で無駄・失敗ばかりの、ポンコツ旅も大好きなんですよ。思い出して、少し笑えるような……。いや本当、旅はどちらに転んでも素敵で良いですよね。
ーー今回の作品に対する反応で、特に印象に残った読者の声について、教えて下さい。
「無駄を楽しんでいるなら、それは無駄ではないんですよね」というコメントをいただきまして。本当にその通りだなと思います。
無駄、つまり余白や行間を楽しむ能力って、多分皆にあると思うんですよ。でも、忘れてしまっている人も多いんじゃないかなって。余白がまったくなくなって……合理的で無駄のないもので埋め尽くされた世界って、それはそれで美しい世界なんでしょうけど、僕は窮屈だと思うんです。
必要なものなんですよね、無駄は。言葉としては矛盾しているんですが……。その無駄を楽しむことができるなら、それは「豊かさ」であると、僕は思いますね。
ーー今後、Twitterで発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?
エッセイマンガの発表はこれからも続けていくつもりですが、これからはそれと並行して、創作マンガも描いていきたいですね。感動や驚きなど、何かしら心を動かせるマンガを描けるよう努力していきますので、よろしければまた読んでいただけたらうれしいです。
(マグミクス編集部)