日野日出志の恐怖マンガが描く「真実」 大人になった今こそ見えてくる?
一度読んだら決して忘れることができない、日野日出志氏の恐怖マンガ。そんな日野日出志ワールドの魅力を伝えるドキュメンタリー映画『伝説の怪奇漫画家 日野日出志』がDVDとしてリリースされました。本人や関係者への興味深いインタビュー映像をもとに、日野日出志作品が愛され続ける理由を探ります。
子どもたちの脳裏に刻まれたホラー描写

きれいは汚い、汚いはきれい―。
シェイクスピアの戯曲『マクベス』で魔女たちが呟く有名な台詞です。美と醜、善と悪、幸福と不幸。世間的な価値観は相対的なものであって、見る人や見る立場によってまったく違ったものになることを意味しているといわれています。そんな言葉がぴったりと合うのが、ホラー漫画の第一人者・日野日出志氏が描く恐怖の世界です。
動物の死体にはウジ虫が湧き、ネズミが顔を覗かせ、ゲジゲジが這い回る陰鬱な世界にたたずむ、異様に目の大きなキャラクターたち。子供の頃に日野日出志氏のマンガを読み、嫌悪感を覚えた人は少なくなかったのではないでしょうか。おびただしい血や膿が流れる描写がトラウマになった人もいるでしょう。
でも、大人になって現実世界で恐ろしい目に遭い、ドロドロした人間関係を体験した上で、あらためて日野日出志作品を読むと、それらが「汚いはきれい」と思わせる深遠な世界だったことに気づくのです。
同じホラー漫画でも、楳図かずお作品は映画化やテレビドラマ化もされてメジャー感があるのに比べ、日野日出志作品は裏メジャーな印象を与えます。あまりにも振り切った残酷描写やグロテスクなイメージが強すぎるのでしょう。いったい、日野日出志とはどんな人物なのでしょうか。
日野日出志作品がトラウマになっている人におすすめのドキュメンタリー映画があります。2019年8月にDVDとしてリリースされた『伝説の怪奇漫画家 日野日出志』です。みうらじゅん、ちばてつや、伊藤潤二ら人気漫画家たちが、日野日出志作品の魅力と本人の素顔について語っています。
もちろん、本人へのロングインタビューも収録し、表現者として葛藤の日々を過ごしてきたという人間的な側面について知ることができます。