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映画『惡の華』の井口昇監督が、一歩も譲らなかった「ブルマ合わせ」とは?【インタビュー(2)】

魔が差す瞬間は誰にでもある。だからこそ描いた「衝撃シーン」

原作マンガでも読者に衝撃を与えた、「夏祭り」のシーン
原作マンガでも読者に衝撃を与えた、「夏祭り」のシーン

——ブルマが映るシーンには、監督のこだわりが詰まっているのですね。

 ブルマって、地域によって色が違うんです。ここでもカメラマンと意見がぶつかりました。僕からすれば、「ブルマは絶対に紺色」なんですが、カメラマンは「えっ、ブルマといえばエンジ色じゃないの?」と。他にも「うちはグリーンだった」「ブルーにストライプが入っていた」などいろんな意見が出て、喧々諤々(けんけんがくがく)でした。最終的には僕が「ブルマが紺色じゃないなら監督を降板する!」と主張を押し通しました(笑)。

——今回の実写版は、内容盛りだくさんな中学編で終わるのかなと思っていたら、きちんと高校編の最後まで描いてあって驚きました。

井口 高校編の終わりまできちんと描くというのは、今回の映画化で絶対ハズせない条件でした。中学時代にやらかしてしまったトラウマの物語のまま終わっちゃダメだと、僕は思っていました。トラウマを抱えた状態から、どうやって乗り越えていくかが『惡の華』のテーマなので、そこをどう描くかが今回の映画化の核になるという意識で臨んだんです。

——夏祭りの日、みんなが見ている前で仲村さんと春日が頭から灯油をかぶるシーンは、かなりの反響を呼びそうです。

井口 時事的なことからも、仲村さんと春日が死の崖っぷちに立つシーンは問題視されるかもしれません。でも思春期は、ほんのちょっとしたことで魔が差してしまう時期でもあると思うんです。本当に事件を起こしてしまうかどうかは別にして、魔が差してしまう瞬間は誰もが体験しがちなことじゃないでしょうか。

 でも、それはやっぱりやってはけないこと。そこを飛び越えることで、大人に成長していくんだと思うんです。今回の『惡の華』は自分が若い頃ではなく、ある程度の年齢を重ねて大人になったことで撮れた映画だと思っています。

 10代の頃の僕もそうでしたが、悩みを抱えている人は明るい映画には興味が持てないもの。明るいキラキラした映画には興味が持てない人たちに、『惡の華』を観てもらえるといいですね。

(長野辰次)

●井口昇(いぐち・のぼる) 
 1969年生まれ。東京都出身。自主映画『クルシメさん』(1998年)で監督デビュー。『恋する幼虫』(2003年)や「帰ってきた!刑事まつり」の一編『アトピー刑事』(2003年)など、“生きづらさ”をテーマにした作品で注目を集める。

 主な監督作に『楳図かずお恐怖劇場 まだらの少女』(2005年)、『猫目小僧』(2005年)、『おいら女蛮』(2006年)、『片腕マシンガール』(2007年)、『ロボゲイシャ』(2009年)、『電人ザボーガー』(2011年)、『ヌイグルマーZ』(2014年)など。
 諸星大二郎原作の『栞と紙魚子の怪奇事件簿』(日本テレビ系)、平本アキラ原作の『監獄学園』(毎日放送、TBS系)、椎名ナナ原作の『覚悟はいいかそこの女子』(毎日放送、TBS系)など漫画原作の実写ドラマも手掛けている。「大人計画」所属の役者として舞台や映画に出演することも少なくない。

【画像】映画『惡の華』で井口監督がこだわった「ブルマ」のシーン(7枚)

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