【ボードゲーム人生相談】名前をバカにされたつらい思い出。自信を取り戻すには?
山形県の古刹で住職を務め、ボードゲームジャーナリストとしても活動する小野卓也さんが、相談者の「お悩み」に答えます。最後はおすすめのボードゲームで気持ちも前向きに!?
つらい記憶と現在の不幸が結びつく、「因果関係」の呪縛
禅寺の住職であり、ボードゲームジャーナリストでもある小野卓也さんが、さまざまな「お悩み」の相談に答えます。今回のお悩みは……
【名前をからかわれてトラウマになり、自信が持てません(40歳男性)】
私は珍しい名前だったため、小学校からずっと名前をからかわれてきました。周りは面白おかしくいじっただけなのかもしれませんが、私は親がつけてくれた名前をバカにされ、自尊心を傷付けられたように感じて、毎日家で泣いていました。
大人になった現在も、子供の頃を思い出すと涙があふれ、つらい思い出がよみがえります。つらい過去も受け取り方を変えて、胸を張って生きられたらと思うのですが、なかなかうまくいきません。どうすれば自分に自信が持てるようになるでしょうか?(40代男性)
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昔のインドに、名前を聞かれて「私は宇宙である」と答えた高名な哲学者がおります。「究極的には名前など仮のものに過ぎず、実を表すものではない」という思想が込められているのですが、世間的には「名は体を表す」というのが実情で、アイデンティティとして不可欠のものですね。それを傷つけるというのは、たとえ冗談のつもりだとしても人権侵害であり、許されるものではありません。
性被害者支援センターには、被害を受けて何年、何十年も経ってから相談に訪れる方がいるそうです。性被害に限らず、心の傷は何年も癒えることはなく、大人になってもフラッシュバックすることがあります。「根にもっていても苦しいばかりでしょう、許してあげなさい、水に流しましょう」と言われても、当事者にとっては容易なことではありません。
今回は「自分を苦しめる思いにどうして何年も、何十年も囚われてしまうのか」について考えてみたいと思います。
現在、どのようなときに辛かった幼少期を思い出されますか? 間違っているかもしれませんが、私の経験では、「何か思い通りにいかないことがあったとき」が多いような気がします。仕事で失敗したとき、人間関係ですれ違いがあったとき、体調がすぐれないとき……などなど。
そのとき、思い通りにいかない現在と、辛かった過去の間で無意識のうちに因果関係が結ばれます。つまり、仕事で失敗をしたのは、人間関係ですれ違いがあったのは、体調がすぐれないのは、あのときバカにされたせいだ、「自尊心が傷つけられ、自己肯定感をもつことができずに成長し、他人に思いやりをもつこともできず、他人からも認められない。だから自分のせいではない」と。
しかし、そのような因果関係は、「これからも何をやってもうまくいかないだろう。過去は変えられないし、自分も子どものときからずっとこのままである」と、この先も自分自身を不幸の檻に閉じ込め続けます。
しかしこれでは、あまりに悲しくないでしょうか?