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ウルトラマン以前の特撮が怖すぎ! 『美女と液体人間』ほか大人向け怪奇映画たち

1966年にTV放映が始まった『ウルトラマン』は、いきなり誕生したわけではありません。『ゴジラ』をルーツとする怪獣映画の歴史に加え、人間が特殊能力を持つようになる「変身人間」シリーズという流れもあったのです。怪獣映画が「陽」なら、変身人間は「影」の世界です。ふたつの要素が結び付き、ウルトラマンが生まれたと言えそうです。

円谷英二が手がけた、猟奇的な「変身人間」シリーズ

映画『美女と液体人間』DVD(東宝)
映画『美女と液体人間』DVD(東宝)

 暑い夏の夜は、怖い映画を観ることでひんやりと過ごしたいと考える人もいるのではないでしょうか。そんな人にオススメしたいのが、昭和テイストたっぷりな東宝の特撮映画「変身人間」シリーズです。

 今はなき映画館「浅草東宝」では、クレイジーキャッツ主演のコメディ映画特集や加山雄三さん演じる「若大将」シリーズと並んで、オールナイト上映の人気プログラムとなっていました。

 怪獣映画の金字塔『ゴジラ』(1954年)を大ヒットさせた東宝の田中友幸プロデューサーのもと、東宝系のおなじみの俳優たちが多数出演。不気味な変身人間が登場する特撮シーンは、もちろん円谷英二特技監督が手がけています。

 1966年7月にTV放映が始まった円谷プロ制作『ウルトラマン』(TBS系)の前史にもあたる、「変身人間」シリーズを振り返ります。

エロチズム漂う『美女と液体人間』

 ドアの下のすき間や窓から、ドロドロとしたゲル状の液体が流れ込み、見る見るうちに青白く発光する液体人間へと変貌していきます。また、液体人間に襲われた者も、液状化して新しい液体人間となるのでした。液体人間に狙われた美女の悲鳴が、夜の街に響き渡ります。

 本多猪四郎監督、木村武脚本による『美女と液体人間』(1958年)は、大人のエロチズムを感じさせる怪奇映画でした。

 東宝の怪獣映画『空の大怪獣 ラドン』(1956年)に出演した白川由美さんが、キャバレーで歌う美人歌手・千加子を演じています。千加子は液体人間にしつように追いかけられ、下着姿で下水道を逃げ惑うことになります。『地球防衛軍』(1957年)でも入浴シーンを演じた白川さんのセクシーさが、強く印象に残ります。

 白川さんが逃げ込む暗い下水道は、人間の欲望の掃きだまりのような場所です。そんな欲望の迷宮と化した下水道路を、白川さんは下着姿で懸命に逃げるのです。特撮映画というと子供向きと思われがちですが、『美女と液体人間』は子供を連れてきたお父さんが密かに楽しんだ作品だったように思います。

 もちろん、エロチックなだけの映画ではありません。大学助教授の政田(佐原健二)が調べていくうちに、大量の放射能を浴びた人間が最初の液体人間だったことが分かります。

 この設定は、1954年にビキニ環礁で行なわれた米軍の水爆実験によって日本の漁船が被曝した「第五福竜丸」事件がモチーフとなっています。乗組員たちは帰港後すぐに病院に収容、マグロは大量廃棄されるなど、大変な騒ぎとなりました。

 行き過ぎた科学に対する恐怖、人間の本能であるエロス、悪夢のような世界を描く特撮技術……。さまざまな要素がひとつに溶け合い、『美女と液体人間』が誕生したのでした。

【画像】大人も魅了された! 「変身人間」など特撮に登場した美女たち(5枚)

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