『君たちはどう生きるか』「よくわからん」シーンが示す衝撃事実 「鳥」は結局何だった?
宮崎駿の集大成という絶賛意見の一方で、難解で意味が分からないとの評価も多い『君たちはどう生きるか』。これまで分かりやすく、力強いメッセージを発信していた宮崎駿監督の作品としては異例のことです。この記事では筆者なりの視点から作品を解説します。
内容や解釈についてまったく情報発信しないジブリ

ほとんど宣伝を行わなかったにもかかわらず、わずか4日で興行収益20億円を突破した『君たちはどういきるか』。年末には北米での公開も予定されており、日本と同様に内容を完全に伏せたマーケティングが行われています。見せないマーケティングは成功したと言ってよいでしょう。
しかし映画の感想については、絶賛だけでなく「意味がわからなかった」というコメントが目立ちます。この記事では「よくわからん」シーンについて筆者なりの視点から解説します。
※以下、本編のネタバレを含みます。ご注意のうえ閲覧ください。
●宮崎駿監督の異なる側面が投影されたキャラクターたち
本作はエンターテイメント映画というよりも、一切の制限を取り払われた宮崎駿監督によるプライベートフィルムに近いと言えます。分かりづらい、という感想が上がること自体がその証明でしょう。
しかし主人公の眞人(まひと)をはじめとした多くのキャラクターが、宮崎駿監督の異なる一面を表していることに気づけば、隠されたメッセージを受け取れるはずです。
●アオサギって何なの?
眞人を異世界にいざなう案内役がアオサギです。ポスターのビジュアルにもなっており、当初は得体のしれない不気味さを醸し出していました。しかし物語が進むにつれてシニカルな中年男性としての本性が現れます。
アオサギには映画監督としての宮崎駿監督の露悪的な自意識が現れているようです。そもそも数ある鳥の中から、なぜ鷺を選んだのでしょうか? 宮崎駿監督は自分自身がアニメ監督でありながら、たびたび「アニメなんて見ずに外に出た方がよい」という趣旨の発言をしています。
だから優美な巨鳥と鼻の大きなチビの中年男というギャップは、鷺と詐欺をかけた語呂合わせで、アニメーションの虚構性に自己言及しているのかもしれません。
エンディングで異界から石を持ち出してきた眞人に、どうせ大した力がない、石の中の出来事もすぐに忘れてしまうと言ったのも、自身の作品の限界性を告白しているようです。
●なぜキリコの頭にも傷があったの?
眞人が石の世界で初めて出会った女漁師のキリコ。タバコをせびる老婆キリコの若かりし頃の姿です。キリコもまた宮崎駿監督の一面で、おそらく頼りがいのある組織リーダーや教育者としての自分が投影されているように見えます。眞人と似たような傷がついているのは、キリコが眞人と同種の存在であることを示しているのでしょう。
キリコは眞人を教育し、ワラワラに獲物を分け与えます。