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『君たちはどう生きるか』「よくわからん」シーンが示す衝撃事実 「鳥」は結局何だった?

ただのマスコットじゃない? ワラワラの謎

宮崎駿監督作品にはカルシファーやコダマのようなマスコットが登場する。画像は『ハウルの動く城』(C)2004 Studio Ghibli・NDHDMTK
宮崎駿監督作品にはカルシファーやコダマのようなマスコットが登場する。画像は『ハウルの動く城』(C)2004 Studio Ghibli・NDHDMTK

『もののけ姫』に登場したコダマのような謎の生き物がワラワラです。ワラワラは栄養を蓄えて風船のように空へ昇っていき、この世で赤ちゃんになるとのこと。星空にワラワラが昇っていく描写は死後の世界を思わせますが、キリコが食事を与えていることから、筆者には若手アニメーターのメタファーに見えます。

 ペリカンのシーンを見てこの「読み」が自分の中で確信に変わりました。

●ワラワラを食べるペリカンの遺言って何なの?

 空に昇っていくワラワラを捕食するペリカン。異界の海は恵みが少なく、ワラワラを食べるしか生きる道はありません。翼が折れ衰弱した姿で、自分たちはここに連れてこられた、飛ぼうとしたがここに来るしかなかった、生きるためにはワラワラを食べるしかなかったのだと告白し、事切れます。

 ワラワラとペリカンの関係性はストーリー上、全く不要なシーンです。ワラワラを食べようと集まったペリカンが炎に追い散らされるシーンだけでも、後に登場するヒメの顔見せとして十分だったはず。あえてこのシーンに尺がとられているのは、宮崎駿監督が伝えたいメッセージなのでしょう。

 このシーンは「人を使いつぶしながらでしか作品を作れない業を背負ったアニメーター」としての宮崎監督が投影されているようです。そんなペリカンを埋葬してあげるのは宮崎駿監督の感傷ではないでしょうか。

●石の世界ってなんなの?

 大叔父が疲れ果てた宮崎駿監督の投影であることに、異論を唱える人は少ないでしょう。石の世界はそんな大叔父が13個の石の積み木をコアに作った異界です。石の数は宮崎駿監督がこれまで手掛けてきた作品の数と一緒です。まさに石の世界はスタジオジブリであり、大叔父ただ一人の手(宮崎駿監督のカリスマ)による危ういバランスで成り立っているのです。

 石の継承者は大叔父の血縁でなければならないという契約があるため、彼は世界の後継者として眞人を指名しましたが、眞人は石には悪があり、また自分にも悪があると回答し継承を断ります。

●あの傷の意味ってなに? 悪の自覚とは?

 石の世界を作るには悪の自覚が必要です。それは石の世界が本質的に悪を内包しているからです。石の世界とはスタジオジブリであり、創作それ自体のメタファーです。そして悪とは、大きな創作につきものの犠牲のことでしょう。

 宮崎駿監督は戦闘機や戦車などのミリタリー趣味でも知られていますが、同時にそれが人殺しの道具であることも自覚していました。そのため空に憧れて戦闘機開発をするという、呪われたロマンをテーマに『風立ちぬ』を制作しました。その悪の自覚が「傷」として表現されているのです。

 まさにアニメーションという創作が本質的に若者を消耗し、一部の人生を狂わせるという悪を内包している構図が見て取れます。創作者はこの悪に無自覚であってはならないという宮崎駿監督からの遺言のようです。

●インコってなんなの?

 直立歩行する鳥のような姿をしており、人間を食べ、帝国を築いているインコ。インコの王は創造者である大叔父と交渉をするなど、世界と帝国の維持に心を砕いていますが、最終的には彼の行為が異界の破滅を招きました。

 そんなインコを「物語進行上の障害」としてだけみるのは表面的です。インコたちは偉大なる大叔父(宮崎駿監督)がつくった世界(スタジオジブリ)で繁栄しているアニメーターかもしれません。異界が壊れて飛び立っていく姿はジブリ解散後の人材放出に見えました。

●最後に

 以上、筆者の考察を紹介してきましたが、未だにパンプレットが販売されていないため、宮崎駿監督からのメッセージや正しい世界観は不明です。視聴者の解釈に対し「答え合わせ」を避けたいのかもしれません。

 これまでになく分かりづらい宮崎駿監督作品を、あなたはどのように解釈しますか? きっと人の数だけ「答え」があるのです。

(レトロ@長谷部 耕平)

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