サザエさんが「登場しない」? お茶の間をザワつかせた超異色エピソード
国民的長寿アニメ『サザエさん』の主役は、もちろんサザエです。ところが、サザエがまったく登場しないエピソードがありました。いったいどのようなお話だったのでしょう?
サザエが出てこない泣けるエピソード
アニメ『サザエさん』は、1969年10月のスタート以来、放送年数が53年を超える長寿番組です。1回の放送につき3つのエピソードが放送されるため、これまで放送されたエピソードは8000話以上にのぼります。
そのうち、主人公のサザエが登場しないエピソードは、たった2話だけです。はたして、どのようなお話だったのでしょうか。
まず、1970年5月3日放送の「ハッピーバースデイ」をご紹介します。タイトル通り、誕生日をめぐるお話です。
ワカメが学校で友達のミコちゃんの誕生日を祝いますが、ミコちゃんは「おめでたくなんかない」と走り去ってしまいました。帰宅後、間違えてミコちゃんのノートを持って帰ってきたことに気付いたワカメは、ミコちゃんの家まで返しに行こうとします。ミコちゃんの家には電話がなかったので、知らせることができなかったのです。
誕生日の話を聞いたカツオは、ケーキを期待してついていきますが、ワカメは「お断りしときますけどね、ミコちゃんの家はあまりお金持ちじゃないのよ」と釘を刺します。ミコちゃんは土手の脇に建てられた古い木造アパートの六畳一間に、親子3人で住んでいました。昭和のアニメの貧乏描写はリアルです。
ミコちゃんのお母さんは保険の外交の仕事に行っていて留守で、お父さんはタクシーの運転手でその日は帰ってこられません。「お仕事で忙しいから忘れちゃってるわ、きっと」と健気に言うミコちゃんを見て、義憤に駆られたカツオは自分たちだけでパーティをやろうとワカメに提案します。
先立つもののないカツオとワカメは、廃物利用でミコちゃんの部屋を飾り立てることにしました。「お部屋がまるで夢の国みたい!」と大はしゃぎのミコちゃん。拾ってきてシーツをかけた穴だらけのソファに腰かけ、出がらしの薄い紅茶を飲んで、3人は笑い合います。
ところが、別れ際にカツオが「子供の誕生日を忘れるなんてひどいな! きみのお父さんとお母さんは!」と憤ると、ミコちゃんは号泣してしまいました。ワカメは「ミコちゃんのパパやママだって一生懸命働いてるのよ! 悪口言うほうが間違ってるわよ!」と兄を叱り飛ばしますが、ミコちゃんは泣きやみません。
そのとき、外からクラクションの音が聞こえました。ミコちゃんのお父さんとお母さんが帰ってきたのです。もちろん、ふたりともひとり娘の誕生日を忘れてはいませんでした。カツオとワカメもミコちゃんのお父さんのタクシーに乗って、一緒にドライブに出かけます。ケーキを食べながら全員で「ハッピーバースデイ」を合唱すると、周りの車はびっくり。きっとミコちゃんは、とても幸せそうな顔をしていたことでしょう。カツオとワカメが友達のために奮闘する、心温まるエピソードでした。