【色あせない記憶】『ストII』がもたらした「対戦格闘ゲーム」文化の芽生え
1991年に登場した格闘ゲーム『ストリートファイターII』(ストII)は爆発的な人気となり、その後登場した数多くの対戦格闘ゲームのひな型になりました。当時『ストII』に青春を捧げたゲームライターの早川清一朗さんが、『ストII』がもたらした熱狂と衝撃、そしてゲームセンターにもたらした変化を語ります。
ゲームセンターに黒山の人だかりが
1991年に登場し、対戦格闘ゲームのブームを生み出した『ストリートファイターII』(以下、ストII)は、のちの多くの格闘ゲームに大きな影響を与えた名作として知られています。現在も、シリーズ作『ストリートファイターV』の大会や競技イベントが国内外で開催されるなど、eスポーツの最前線で存在感を示し続けています。『ストII』発売当時の熱狂と衝撃、そして同作がもたらした影響について、ゲームライターの早川清一朗さんが語ります。
* * *
春麗(チュンリー)でどうやってガイルに勝つか?
『ストII』にハマっていた時期の自分は、寝ても覚めても毎日そればかり考えていました。
遠距離ではソニックブームが飛んで来て、ガードすれば投げハメに持ち込まれて終わり。ジャンプすれば足元を中足払いで狙われる。飛び込めばサマーソルトや立ち中キックで返される。正直言って、詰んでいました。
それでもなお春麗を使い続けたのは、単純に黒ストと太ももに心奪われていたからだと白状できるようになったのは、私が歳を取ったからでしょうか。
今からちょうど28年前の1991年、地元のゲームセンターに通い詰めていた筆者は、日々『ファイナルファイト』や『天地を喰らう』といった横スクロールアクションや、『TATSUJIN』や『R-TYPE』などのシューティンゲームを日々楽しんでいました。
そんなある日、いつものようにゲームセンターへと足を運んでみると、あるゲーム筐体の前に人だかりが出来ていました。どうにか人をかき分け画面をのぞいてみると、そこにはどこかで見たことがあるキャラクターが、ジャンプしたりキックしたりと画面を縦横無尽に動き回っていたのです。
同じゲームセンターに大型筐体の『ストリートファイター』があったので、そのキャラクターがリュウであることにすぐに気づきました。ただ、そのときの筆者は「ああ、あれの続編が出たんだ」程度の感想しか持ちませんでした。
『ストリートファイター』は一応コマンド入力で波動拳、昇竜拳、竜巻旋風脚の3つの必殺技を出せるようになってはいましたが、入力タイミングは極めてシビアで、ボタンは大きなラバーボタンを力いっぱい叩く必要があり、運任せで波動拳を連打するだけの大味なゲームという印象が強かったのです。
それでも多くの人が列を作ってプレイする新作ゲーム、興味が湧かないはずはありません。そしてようやく席につき実際にプレイした『ストII』は、まさに新たな世界を見せてくれたゲームだったのです。