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「美と醜悪」は紙一重? 楳図かずお作品の美少女たちに重なる「ヘビ」のイメージとは

ホラーマンガの巨匠、楳図かずお作品の美少女キャラクターを網羅した『楳図かずお・美少女コレクション』が2019年8月に刊行されました。人間のもつ闇の部分と関わりつつも、読者を引きつけてやまない「美少女」たちは、美醜両面のイメージを持たれる「蛇」を連想させます。

神秘的な美しさと、影を宿す表情が共通点?

「おろち」のイラスト。『楳図かずお・美少女コレクション』(玄光社)より
「おろち」のイラスト。『楳図かずお・美少女コレクション』(玄光社)より

 1950年代から数々の作品を世に送り出し、「恐怖マンガ」の第一人者として知られる、楳図かずお先生が描いた美少女たちに焦点を当てて紹介する『楳図かずお・美少女コレクション』(玄光社)が2019年8月に発売されました。それを手に取り眺めていると、改めて楳図かずお作品の「美」と「恐怖」の相関関係というものに気づかされます。

『美少女コレクション』の序章にも、「恐怖や醜さ、物語の衝撃的な場面や展開も対極にある彼女たちの美しさがあってこそ際立つ」という一文がありましたが、美しい顔が歪み、怨念を宿した恨みの表情に変わり……といったコントラストがあるからこそ、より「恐怖」が際立つのかもしれません。

 楳図かずお作品で多く登場するものに「蛇」というキーワードがあるのですが、ヘビは見る人によって「不気味な生き物」としてとらえられたり、「美しい」と感じる人がいたりと、受け取り方もさまざまです。世には爬虫類が好きという人もいれば、どうしても苦手という人もいます。

 そのように、見る人の感性によって「美」と「醜悪」が表裏一体の生き物が「蛇」なのかもしれません。またこの生き物は古来より霊力が高い生き物として崇められており、「白蛇」が住み着いた家は縁起が良いともされています。

 その「蛇」を題材とした楳図作品に、1965年の「ママがこわい!」シリーズの『へび少女』や『まだらの少女』があります。だいたい「へび女」になるのは影がある美女というのが相場です。イマドキな言い方をすれば「クールビュティー」タイプとでも言えばいいでしょうか……それが楳図作品に登場する美少女たちの共通点のような気がします。

 なかでも、1969年から「週刊少年サンデー」で連載された『おろち』の主役である「おろち」は、楳図作品の代表格といえる美少女キャラなのですが、永遠の命と永遠の若さを保つために百年ごとに深い眠りにつくことや、不思議な力を持つ部分などが、どこか「蛇」を連想させます。

【画像】「影」があるからこそ魅力的? 楳図かずお作品の美少女たち(5枚)

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