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『牙狼』シリーズの雨宮慶太監督、「日本人による独自のファンタジー」を追求

映画監督のみならず、特撮ドラマやテレビゲームのキャラクターデザイナー&クリエイターとしても活躍する雨宮慶太監督。人気特撮シリーズ「牙狼」の最新劇場映画『牙狼〈GARO〉月虹ノ旅人』の製作秘話と、日本ならではのファンタジー映像作品への追求について、お話を聞きました。

作品に漂う、日本ならではの「死生観」

『牙狼〈GARO〉月虹ノ旅人』 2019年10月4日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー
『牙狼〈GARO〉月虹ノ旅人』 2019年10月4日(金)より新宿バルト9ほか全国ロードショー

 特撮映画・特撮ドラマの第一人者として知られる雨宮慶太監督。大人向けの特撮ドラマとして2005年に放映された『牙狼 GARO』(テレビ東京系)は、劇場版やスピンオフ作も製作されるなど高い人気を誇っています。

 2014年に放映された『牙狼〈GARO〉魔械ノ花』(テレビ東京系)のその後のエピソードとなる劇場映画『牙狼〈GARO〉月虹ノ旅人』も公開目前。雨宮監督ならではの独自なファンタジーワールドはどのようにして生まれたのでしょうか。雨宮監督にお話を聞きました。

ーー新作『月虹ノ旅人』は、「牙狼」シリーズを初期から観ていたファンには見逃せない集大成的な作品となっていますね。

 集大成的なものを意識して作ろうとしたわけではないんです。『魔械ノ花』の主人公・雷牙(中山麻聖)のまだ描かれてない部分を考えているうちに、今回の劇場版へと広がっていったんです。

 2016年放映の『牙狼〈GARO〉魔械列伝』(テレビ東京系)で、雷牙の母親は御月カオル(肘井美佳)であることを明かしたんですが、その後をきちんと描く必要があるなと感じたんです。それをしないでいると居心地が悪かった(笑)。雷牙の描いていなかった部分をきちんと補完しようという気持ちが大きかったと思います。

ーー物語の前半は、宮沢賢治の幻想小説『銀河鉄道の夜』を思わせる、叙情的なファンタジーとなっているのが印象的です。

 宮沢賢治の世界は嫌いじゃありません。もともとロードムービー的なものを考えて、『月虹ノ旅人』というタイトルを考えたんです。それで脚本を書いたんだけど、そのときは撮影にまでは至らなかった。内容はかなり変わり、列車の設定だけ残ったんです。

ーー宮沢賢治は1912年に起きたタイタニック号沈没事件に触発される形で『銀河鉄道の夜』を書き上げたといわれています。雨宮監督もそうした体験を?

 いや、宮沢賢治にとってのタイタニック号のような出来事が特にあったわけではないのですが、列車に乗ってあの世へ行くという物語は、日本人の感性にすごく合うなとずっと思っていたんです。西洋では死の世界と生の世界はきっちりと分かれているけど、日本の場合はもっとファジー(あいまい)で、生の世界から死の世界へ列車で向かっているけど、今はどこらへんなんだろう? といった情緒が僕はすごく好きなんです。
 
『牙狼』は人の生き死にを描いた物語でもあるわけです。剣を持って魔物と戦う騎士が主人公だから、負ければ死ぬ。そこは避けられない世界。「牙狼」シリーズ全体に漂っている死生観でもあります。

ーーファンがワクワクする人気キャラクターたちが、続々と登場しますね。

 雷牙を描く上で必要なキャラクターたちを登場させました。「観る人を驚かせたい」という気持ちで僕は特撮ものをずっと撮ってきたわけで、今回もファンが驚くような構図を用意しています。映画『アベンジャーズ』的な、かっこよくて、分かりやすい構図です。でも、この構図に込めた想いを、監督である僕の口から説明すると身もフタもないので、ぜひ劇場で観て感じてほしいですね。

【画像】戦う黄金騎士の宿命と葛藤! 『牙狼〈GARO〉月虹ノ旅人』のシーン(9枚)

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