マグミクス | manga * anime * game

『銀河英雄伝説 星乱 第一章』公開 今なお愛されるSF大河ドラマの圧倒的魅力とは

宇宙を舞台にした大河ドラマの魅力とは

対立しながらも相手を強く意識する、ふたりの主人公(画像は『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』) (C)田中芳樹/松竹・Production I.G
対立しながらも相手を強く意識する、ふたりの主人公(画像は『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』) (C)田中芳樹/松竹・Production I.G

『銀河英雄伝説』はなぜ、長きにわたって、多くの人びとの心を魅了するのでしょうか? 物語は、対立する両陣営にふたりの主人公が同時期に現れたところから始まります。

 ひとり目の主人公、銀河帝国のラインハルトは金髪に青い瞳、高い貴族の地位にありながら、帝国の腐敗した体制を討ち滅ぼさんとする姿勢など、非常に「主人公属性」が強いキャラクターです。

 もう一方の主人公、自由惑星同盟のヤン・ウェンリーは望んで軍人になったわけではなく、「タダで歴史が学べる」という理由で士官学校に入学し、当時トップだった生徒を模擬戦で打ち負かすなど、指揮官としての傑出した才能が開花し、戦乱に巻き込まれていきます。天才でありながら威張らず、飄々として物腰柔らかな雰囲気は、これまた「主人公属性」が強いのです。

 立場や生い立ち、考え方の違うふたりの主人公が、自分の正しさを信じて敵対しているのです。どちらの考え方も共感できる点が、物語の魅力となっています。

 もうひとつ注目したいのは、『銀河英雄伝説』が単なるSF作品ではなく、架空戦記のように描かれている点です。他のSF作品、例えば『宇宙戦艦ヤマト』などのように異星人は登場せず、『スター・ウォーズ』のように人類が超能力を発揮することもありません。

『パシフィック・リム』のような巨大ロボットや巨大怪獣の出番もなく、あくまで欲望と権謀術数渦巻く星間戦争のなかで活躍する人物たちを描くことに徹しています。そのことによって大河ドラマのような壮大なサーガを演出しているのです。

 そして何より、「勧善懲悪ではない」点がとても魅力的です。銀河帝国は軍人が独裁者となった国家で、専制君主制を敷き、一部の貴族が特権階級にいて帝国主義を掲げています。一方、自由惑星同盟は、その帝国の圧政に苦しむ人々が反乱、独立した集団で、民主主義、自由主義を掲げ、共和制を敷いています。

 両陣営の思想は真逆で相容れません。現在の日本で生活している私たちにとっては、どちらかといえば自由惑星同盟の考え方が正しいように感じられそうですが、歴史はそう単純ではありません。作中では、自身の「支持率」を上げるために戦没者を利用し、戦争を美化する民主政治家や、現実のどこかの国のようにポピュリズムを駆使し、強固な支配体制を敷こうする動きなども描かれています。そのリアリティが壮大なサーガをより重厚にしています。

 壮大な人間ドラマの一方で、数千、数万という艦隊がぶつかり合う映像も圧倒的です。宇宙を舞台にした大河ドラマ、『星乱』の第二章以降もぜひ、劇場で体感したいところです。

(二木知宏)

【画像】30年以上愛され、新たに展開する『ノイエ銀英伝』 登場人物とメカデザイン(8枚)

画像ギャラリー

1 2