【漫画】「バウンダリー」って何? 元気のない娘が理由を話したがらない 距離感について「考えさせられる」
元気のない娘に事情を聞いたものの、曖昧な返事しか返されずに心配する母親。気になって思わずもう一歩歩み寄ろうとしますが……?「バウンダリー」という言葉を詳しく説明したマンガが「もっといろんな人に知って欲しい」と話題です。作者のフクチマミさんにお話を聞きました。
親子でも「境界線」が必要な理由とは?
学校から帰ってきた娘はどこか元気がありません。そんな彼女を心配した母親は、娘から事情を聞こうとしますが、「話したくない」といわれてしまいました。家族なら隠し事もなく、何でも打ち明けて欲しいと思う母親でしたが……?
フクチマミさん(@fukuchi_mami)によるマンガ『バウンダリーって知っていますか?』がTwitter(X)上で公開されました。同作品は『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』に含まれるストーリーで、読者からは「勉強になる」「もっと早く知りたかった」などの声があがっています。有益な情報が多く込められている本作品のいいね数は、4.7万件を超えました。
作者のフクチマミさんにお話を聞きました。
ーーバウンダリーについてのマンガを描かれたきっかけを教えてください
このマンガは『おうち性教育はじめます 思春期と家族編』に収録されている話なのですが、この本を描く際、絶対に入れたいと思っていたのがバウンダリーについてでした。
アメリカなどでは幼児期に教わるような一般的な概念なのですが、日本ではまだ性教育や心理学など一部の学問内でしか耳にすることがなく、バウンダリーに関する書籍も本当に数少ないです。
私もバウンダリーという言葉を知ったのが5年ほど前で、子どものころから「なんだか人との関係がうまくいかないな……。苦しい。」と悩んでいました。
ところがこの言葉に出会ったとき、謎が解けた感覚があり、実際にそこから人間関係が良好で楽になったのを覚えています。「バウンダリーのことは知っておいて損はない! というか絶対プラスになる!」と確信をもって描いたので、これだけたくさんの人に反応していただけたのはうれしいです。
ーーバウンダリーがとても重要だと感じても、なかなか実践するのが難しい人に向けて、うまくいくコツなどはありますか。
バウンダリーを引く為には「NO」を伝えることが必要なのですが、私たちは「NO=わがまま、存在否定、反抗」のように捉えているから伝えづらいんですよね。
まずその刷り込みを少しずつ塗り替えていくことが必要なので「NOは自分や相手そのものを否定することではない」「NOは自分や相手を守り大切にすることだ」と自分に言い聞かせるところから始めてみるのはどうでしょうか。
あとは、NOを伝えることと受け止めることはセットなので、頭の中で線を引く自分と相手の姿をイメージしてみるのもいいかもしれません。
ーーたくさんの感想が寄せられていますが、特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について教えてください。
印象に残ったのは、「家族なんだから」と親から踏み込まれて、傷ついてきた経験を持つ方の感想がとても多かったことです。バウンダリーを知ったいま、同じことが家族間、親子間で繰り返されないように、私たちの世代から変えていければと思います。
ーー本作品は子供の教育だけでなく、良好な人間関係の構築にも通じる点があると感じました。フクチさんが人と接する際に気を付けていることはありますか?
「自分と他者は例え親子であっても違う人間」と繰り返し自分に言い聞かせることでしょうか。親しい友人や我が子は、本当にちょっと油断すると自分と同一視してしまいがちな存在で、良かれと思って相手の意に沿わない押し付けやコントロールをしてしまいがちだと思います。
あとは失敗をしたら言葉にして謝ることも気を付けています。バウンダリーを知ったのが数年前なので、私自身もときどきわからなくなってしまうことがしょっちゅうです。
よく自問自答をしていますし、「これってバウンダリー越えちゃってないかな?」と意見を聞くこともあります。失敗もしつつ試行錯誤して徐々に線引きがうまくなっていければなと思っています。
ーー『おうち性教育はじめます』が好評発売中とのことですが、作品への想いや見どころを教えていただけますでしょうか?
「性教育って生殖の話だよね、恥ずかしい……。できれば避けて通りたい」と思う人は多いと思います。もともと私も抵抗感がすごくありました。日本では十分な性教育を受けてきていない大人がほとんどなので、あまり知られていません。
実は性教育って生殖に関する話はほんの一部で、さまざまな観点から「自分と他者を大切にするためにはどうすればいいか」が学べる、とても実用的で人生に役立つ面白い学問なんです。
このバウンダリーの話を読んで気持ちが動いた人には、ぜひほかの話も読んでみてほしいです。きっとこれまでのモヤモヤが紐解けるような知識に出会えると思います。 第1弾は幼児期から10歳くらいまでの子ども、 第2弾は、思春期頃からの子どもを持つご家庭向けの内容で、親から子どもへの言葉かけがわかる、一緒に学べるコミックエッセイです。
このマンガは男性の読者も案外多くて、商業的な性情報には近いけれど、性教育からは遠ざけられてきた男性にとって新しい発見があるようです。脅したり叱りつけたりするような内容はありませんので、怖がらずに読んでみてください。
(マグミクス編集部)