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『聖戦士ダンバイン』のビルバイン登場から40年 最強ゆえに歩んだ苦難の道とは?

『聖戦士ダンバイン』後半の主役機であるオーラバトラー「ビルバイン」は、ゲームでの活躍で幅広い層から人気のある機体です。しかし、それゆえに予想外の「邪魔者」が次々と現れました。

「世界観を壊すデザイン」だった理由とは?

「ROBOT魂 [SIDE AB] ビルバイン」(BANDAI SPIRITS)
「ROBOT魂 [SIDE AB] ビルバイン」(BANDAI SPIRITS)

 本日2023年8月27日で、1983年に『聖戦士ダンバイン』第29話「ビルバイン出現」が放送されてから、ちょうど40周年となります。その初登場シーンは、今でも話題になるほどインパクトのあるものでした。現在でも知名度の高いビルバインについて、誕生から今日までの軌跡を振り返りましょう。

 ビルバインはスポンサーであった玩具会社「クローバー」の主導のもと、デザインが考案されました。あくまでもオモチャとしてのデザインを意識したため、本来ならば昆虫や生物感を意識したオーラバトラーのコンセプトとは違い、子供の目線からカッコいいとされる鳥と機械的なイメージが前面に出ています。

 そのため、当時の『ダンバイン』ファンからの評判はあまりよくありませんでした。筆者も最初にデザインを見た時、唖然としたことをおぼえています。作品の世界観にそぐわない2号ロボのデザインに、アニメファンと呼ばれる層の人からは否定的な意見が多くありました。

 もちろん、アニメスタッフもこのことには当然気付いていたようです。当時、オーラバトラーのデザインを担当していた出渕裕さんは、メーカー側のオモチャデザインをリライトしたものを富野由悠季監督に提出していました。しかし、結果的に使われなかったそうです。

 そういった経緯が関係するかは不明ですが、アニメ用のビルバインのクリンナップは『聖戦士ダンバイン』のキャラクターデザインである湖川友謙さんが担当しました。湖川さんは他のオーラバトラーのデザインでも出渕さんとやり取りをしていたので、本作の世界観に添った総合的デザインをコーディネイトしていたのでしょう。

 そして第29話で「ビルバイン出現」が放送されます。そして、この放送でビルバインの評価は真逆なものとなりました。それは実際に映像で動いたビルバインが、想像以上にカッコよかったからです。

 この29話の作画監督は坂本英明さんと大森英敏さん、さらに作画監修で湖川さんという鉄壁の布陣でした。その作画レベルは、本作のなかでも上位に位置します。新たな主人公機ビルバインのデビューにふさわしい、密度の濃い映像でした。

 さらに演出も素晴らしく、個人的には新旧主役機交代のベストアンサーとも言うべき、息をもつかせぬ展開だったと思います。それまでの主役機ダンバインの撃破から新メカのビルバインの登場、乗り込んだショウ・ザマがビルバインで戦線復帰、ウイングキャリバー状態からオーラバトラーに変形して一刀両断で敵を真っぷたつにする流れは何度見ても飽きることはありません。

 こうして鮮やかなデビューを果たしたビルバインでしたが、思わぬ悲劇がやって来ます。それはメインスポンサーである株式会社クローバーの倒産でした。あれほどオモチャとしてのデザインを優先したビルバインにとっては、皮肉な出来事です。

 メインスポンサーはプラモデル販売を担当していたバンダイが引き継ぎ、オモチャもトミー(現在のタカラトミー)が販売することになりました。その結果、『聖戦士ダンバイン』は全49話で約1年間の放送を無事に成し遂げます。

 余談ですが、終盤でビルバインは夜間迷彩色に塗装されていました。ヒーロー然とした赤と白から、地味な青系統のリアルさを優先したカラーリングです。この異例のカラーリング変更も、玩具会社主導ならばできなかったことかもしれません。

【画像】ビルバインの上位互換? 本当は主役機だった幻の「サーバイン」を見る(4枚)

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