笑いに変えた? ケガの功名で名シーン誕生? アニメの「ミス」にまつわる裏話
放送順のミスからセリフの誤植まで、アニメ史にはいろいろな意味で「伝説」となった痛恨ミスが数多く存在します。なかにはユーモアな切り返しでやらかしを笑いに変えたり、尺不足によって書き足された場面が作中屈指の名シーンとして知られるようになったりしたケースも少なくありません。ミスの裏にもさまざまな知られざるドラマがありました。
誤って第3話で第4話を放送!?
「間違い」は誰にだってあるものです。もちろんアニメの制作スタッフも例外ではなく、「そんな間違いある!?」と思ってしまうようなやらかしが数多く存在します。今回は、そのなかでもある意味伝説となった痛恨ミスをいくつかご紹介しましょう。
たとえば伝説的な珍事として語り継がれているのが、2018年放送のTVアニメ『でびどる!』で発生した「話数事故」です。
それは第3話が放送されたタイミングでのことでした。本来であれば「ブランチレポーター」というエピソードが展開されるところを、第4話にあたる「行くぜ強盗少女」が放送されたのです。
当然のごとく多くの視聴者が困惑するなか、同作のプロデューサー・まさたか氏が旧Twitter上で、ことの経緯を説明しました。どうやら音響スタッフが間違えて4話の作業を進めてしまったがために、今回のミスが発生したそうです。
番組の公式Twitterにもすぐさま謝罪文が投稿されましたが、その釈明の仕方も「3話切りを考えていた方! 残念だったな……お前は既に4話を観ているッ!!」とかなりユニークなものでした。おかげでネット上では「3話切りの法則」への対策だったのではないかという俗説が出るなど話題になり、ある意味大きな爪痕を残したのです。
一方、1999年に放送されたアニメ『HUNTER×HUNTER』の「ヨークシン編」では、ファンの間で有名なセリフの誤植が発生しています。
クロロ=ルシルフルが未来予知の念能力を持つネオン=ノストラードに占ってもらった際、「向かうなら束がいい」という結果が出るのですが、正しくは「向かうなら東がいい」でした。
この誤植の事情は特殊で、当時のアニメが単行本のエピソードに追いついており、「週刊少年ジャンプ」本誌の連載分から脚本を起こすというスケジュールで進行していたために起こっていたのです。
セリフも本誌からそのまま引用されていたのですが、そもそも原作の時点で「東」が「束」と間違えられていました(後に修正)。特殊な制作体制だったがゆえに、起きてしまったミスです。
その他、セリフの間違いとして長年語り継がれるも、後から「間違いというのが間違い」と言われるようになったのが、1985年より放送されたTVアニメ『機動戦士Zガンダム』の「汚名挽回」事件です。
第4話「エマの脱走」において、ジェリド・メサが「汚名挽回」というセリフを用いていたのですが、「汚名は挽回ではなく返上するもの」「『汚名返上』と『名誉挽回』が混同されている」などと、当時からツッコミを受けていました。「汚名挽回」はジェリドの代名詞としてイジられ続けることになります。
ところが2014年に国語辞典編纂(へんさん)者の飯間浩明氏がTwitter上にて、「『挽回』は『元に戻す』という意味があるので、『汚名挽回』は『汚名の状態を元に戻す』と考えられ、誤用ではない」と投稿しました。つまり約30年のときを経て間違いではなかったと、文字通り「汚名挽回」をはたしたのでした。
その他、制作時のミスが名シーンを生んだとされるのが、アニメ『ルパン三世(テレビ第2シリーズ)』の最終話「さらば愛しきルパンよ」です。
同エピソードは宮崎駿監督が「照樹務」名義で脚本・演出を担当しており、作中に『天空の城ラピュタ』のようなロボット兵が登場したり、ヒロインの小山田マキを『風の谷のナウシカ』のナウシカ役でおなじみの島本須美さんが務めたりと、宮崎監督らしい要素にあふれた回として知られています。
そして物語は挿入歌の「SUPER HERO」をバックに、ルパンたちが朝陽を眺めながら車で走り去っていく場面で幕を閉じますが、2003年に発売された『スタジオジブリ絵コンテ全集第II期 ルパン三世 死の翼アルバトロス・さらば愛しきルパンよ』によると、本来はもっとあっさりとしたシーンで終わる予定だったようです。
しかし、制作時のミスで放送枠に対して時間が不足してしまい、急遽場面が足されることになります。いわば「突貫工事」ではあるものの、「SUPER HERO」が醸し出すシックな雰囲気も相まって、むしろ印象的なシーンへと生まれ変わったと評判の場面です。
(ハララ書房)