「ドラクエは今、鳥山明デザインじゃない」の噂はどこまで本当か 「本人談」では?
鳥山明はもう『ドラクエ』のデザインを担当していない? そんな噂が巷ではちらほら聞こえてきます。実際のところどうなのでしょうか?
「ドラクエキャラ」をめぐる鳥山明先生の噂は本当か?

日本中を虜にし続けるRPG『ドラゴンクエスト』シリーズは、第1作目からシナリオ:堀井雄二さん、キャラクターデザイン:鳥山明先生、音楽:すぎやまこういち氏、という盤石にも程がある布陣で大ヒットを重ねてきました。そんな『ドラクエ』シリーズですが、すぎやま氏が2021年に逝去したこともあり、「ドラクエ音楽」をどなたが引き継ぐのかにも注目が集まっています。
一方、鳥山明先生のキャラクターデザインに関しては、長年こんな「噂」が巷でささやかれ続けています。
「ドラクエって今、鳥山明がキャラクターデザインをしていないのでは?」
ご存知の通り『ドラクエ』が今日の人気を築く上で、第1作からキャラデザを担当してきた鳥山先生の貢献度は多大なものでした。とりわけ従来のイメージでは「ドロドロの化け物」であった「スライム」を、誰もが知るかわいらしいキャラクターとしてデザインしたことは世界的な「大発明」です。
以降、鳥山先生は現在開発中の『ドラゴンクエストXII 選ばれし運命の炎』にいたるまで、全作品のキャラクターデザインを担当しているわけですが、上記の噂はどういうことでしょうか。その真偽に関して、掘り下げてみる必要があるでしょう。
実際、「ドラクエキャラ」は全て鳥山先生がデザインしている、と考えている方は多いはずです(筆者もそうでした)。とは言え、今思えばモンスターだけでも数千といるわけであり、これら全て鳥山先生がひとりでデザインしたと考えるのは、現実的でないのかもしれません。
例えば『ドラクエ』シリーズのスタッフロールを確認すれば、『ドラゴンクエストVI 幻の大地』の時点で、「キャラクターデザイン」とは別に「モンスターデザイン」の項目が設けられ、鳥山先生とは別にアニメーターの中鶴勝祥氏の名前が書かれています。以降のナンバリングでも、鳥山明氏以外のデザイナーの方の名前が登場することになりました。少なくとも、「鳥山明デザインではないキャラがいる」こと自体は事実のようです。
『ドラクエ』はナンバリングを重ねるごとに、多くのスタッフや制作会社を抱えるビッグタイトルへと成長していきました。その過程で分業が増えるのは当然のことです。
なお、鳥山先生は『ドラクエ』30周年記念に際したコメントのなかで「今はほとんどメインの人間達ばかりでそんなに多くのデザインをするわけではない」と分業にも触れています。逆に言えば、近作でも鳥山先生はメインキャラをデザインしているので、上記の「噂」は誤りであったと結論づけることができます。
すぎやまこういち氏が「ドラクエ音楽」を生み出したのなら、鳥山先生は「ドラクエキャラ」を生み出しました。その土俵のうえで、新たな才能が新たなキャラを描けば、それは間違いなく「ドラクエキャラ」なのです。
(片野)