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サザエさんは昭和の「最先端」女性! おなじみの髪型が流行してたって本当?

国民的認知度のサザエさんは、個性的な髪型が特徴のキャラクターです。パーマヘアに長い前髪をぐるぐる巻いた彼女の髪型が、実際に日本で流行していたことをご存じでしょうか。さらに、磯野家のライフスタイルも、1950年代には、最先端のものだったのです。

サザエさんの個性的な髪型は実在していた!

『サザエさん』1巻(朝日新聞出版)
『サザエさん』1巻(朝日新聞出版)

 サザエさんといえば、長い髪をぐるぐると巻いてまとめた個性的な髪型が印象的です。その個性的な髪型は、かつて日本で実際に流行していたということをご存知でしょうか。また、磯野家のライフスタイルは、当時の日本では最先端の生活だったと言えます。その理由を『サザエさん』連載当時の時代背景とともに紹介します。

 まず、サザエさんがなぜあのような髪型をしているのか、疑問に思う方も多いでしょう。サザエさんの髪型は、昭和20年代の日本で流行していた「モガヘアー」というヘアスタイルです。『サザエさん』の連載は1946年に始まっているため、サザエさんは最先端の流行を取り入れているおしゃれな女性だったと言えるでしょう。

 1946年から74年まで連載された『サザエさん』は、戦後間もないころから高度成長期にかけての日本の様子が描かれた作品です。3世帯同居や黒電話など、磯野家の生活は、現代の価値観からすると古いと感じられるケースも少なくありません。しかし、ところどころで「最先端」の暮らしをしていることが分かります。たとえば、サザエさんは結婚してもなお実家に住んでいますが、当時の日本では基本的には結婚すれば女性側が男性側の実家で同居する、というパターンが大半でした。

 また、サザエさんは「快活でおっちょこちょいな女性」というイメージがありますが、このようにアクティブな言動をする女性は、当時としては「新しいタイプの女性像」だったようです。当時の既婚女性がこんなに自然体でいられるのは、サザエさんが実家に住んでいるからなのかもしれません。

 最新の流行ヘアを楽しみ、実家で夫と子どもとのびのび暮らす様子を描いた『サザエさん』は、戦後から高度経済成長期を生きた女性たちが「家制度」から解放されることを象徴していた作品とも言えます。

「家制度」とは1898年に制定された、明治憲法下の民法において規定された日本の家族制度です。大日本帝国が、国民に「天皇は国の家長である」という考えを浸透させるため、家長である父とその家族の関係を、天皇と国民の関係になぞらえたものでした。そして、「家」のなかでの女性、特に「嫁」の立場はとても低いところにあります。自分の財産を夫に管理されたり、働きに出るにも夫の許可が必要だったりと、今では考えられないような境遇だったのです。

 このような「家制度」は、終戦後のGHQの介入により廃止になりました。しかし女性たちを取り巻く環境は、働く場所が充分に保証されないなど依然として厳しく、経済的な自立が難しい状態でした。

『サザエさん』の舞台は高度経済成長期にまで及びますが、その頃にもまだ「女性は夫に従うもの」という考えは根強く残っていたようです。厳しい時代背景のなかで、言いたいことをはっきりと口にし、元気に飛び回るサザエさんの姿は、「家制度」から解放される新しい時代の女性像だったのかもしれません。そして、それは戦前の1935年に15歳で漫画家デビューし、生涯をマンガに捧げた『サザエさん』の作者・長谷川町子先生の生き方にも重なります。

(LUIS FIELD)

【画像】そっくり!髪型もスタイルもサザエさんに似ている長谷川町子先生を見る(3枚)

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