『ブラック・ジャック』が稼いだ総額は約274億円? 最高・最低・平均額を出すと?
連載から50年周年を迎えた『ブラック・ジャック』は、超高額な手術料を取る無免許天才外科医を描いた物語です。彼が作中で稼いだ総額はいくらなのでしょうか?
「3億円いただきましょう」「手術代はおごってやるぜ」
手塚治虫先生の代表作『ブラック・ジャック』が、1973年「週刊少年チャンピオン」で連載を開始してから50周年を迎えました。無免許の天才外科医が難解な手術に挑み奇跡を起こす同作は、現役の医師たちが最も影響を受けたマンガともされています。
『ブラック・ジャック』といえば、たびたび描かれる破格の手術料金で驚かされます。数千万円を提示する場合もあれば、話の流れで無料なんてこともたくさんありました。ちなみに、おおざっぱですが、作中の金額は、約1.8倍すると現在の価値になるとされます。
そこで疑問なのが、ブラック・ジャック(以下、B・J)はいったいいくら稼いだのか? という点です。『ブラック・ジャック』のお金について調べてみました。まず明確な「総請求額」、また「一度の仕事の最高額」「一度の仕事の最低額(無料を除く)」、そして「報酬を返した総額」も出してみます。さらに請求額が不明な手術はたくさんあるので、「手術の平均額」も出しました。
本作の連載は229話で終了し、その後、不定期掲載もあって全242話ありますが、お蔵入りの話などもあることから、データの対象は秋田書店から現在出版されている全25巻・合計234話からとさせていただきます。
●請求最高額第1位「150億円」 第21巻・第107話「こっぱみじん」
このエピソードでは、戦争中の独裁国の大統領夫人がB・Jに「命を狙われている夫のお抱え医師として一緒にいて欲しい」と依頼してきます。150億円は、B・J 本人も危険ということで、保険料も含めて請求した値段です。
しかし、大統領は息子が投げた手榴弾で死亡。B・Jはその身体のあらゆる部位を切り取って、瀕死状態の子供40人に移植手術を行います。国民に嫌われた独裁者は、「こっぱみじん」になったけれど最後に人の役に立った…という話でした。
ちなみに、個人とのやりとりによる「手術料」としての最高額は「約14億円(5百万ドル※76年の1ドル約280円で換算)」で、ふたつのエピソードあります。
・第16巻146話「あるスターの死」
依頼者はかつてのハリウッド大女優です。全身整形手術を施して若かりし頃の美しさを手に入れ、再び映画に出演したい……この願いを叶えることになります。女優は映画出演が決まったあと交通事故で亡くなりますが、B・Jは彼女の遺体を骨だけにして、手術料金だった5百万ドルを費やして骨に肉付け特殊加工を施し、映画出演の夢を叶えます。実質もうけはありません。
・第19巻177話「失われた青春」
石油王ゼット・リンクが、1年後に元の顔に戻す条件を付けて整形手術を依頼します。彼は「青春を取り戻したい」と話していましたが、別人になった本当の理由は、昔の恋人を死なせた男を殺す復讐のためでした。ゼットはまんまと殺害に成功しますが、誤算で元の会社に戻ることができず結局警察に銃殺されます。金額は明言されていませんが、最後のコマに「5,000,000」と書かれた紙があるので、これを5百万ドルとしました。
●最低請求額1位「30円」 第15巻・第142話「がめつい同士」
B・J は3年前に手術をした高利貸しの男に、そのときの料金5千万円を払えと迫ります。男は工場を営む家族に地所と工場の登記簿を渡すよう迫って8千万円を徴収し、B・Jはようやく報酬を受け取りました。何もかも失った家族3人は車に飛び込み、一家心中をはかりますが、その場に居合わせたB・Jが応急処置を施し一命を取り留めます。
その時、病院側から診察費を請求してほしいと言われて出した金額が「30円」です。さらに一家から奪った登記簿も「予防薬」だと言ってすべて返すのでした。