「お前はもう死んでいる」が原作『北斗の拳』で登場した回数は? 厳密に数えると?
2023年に連載開始から40周年を迎えたマンガ『北斗の拳』には、多くの人が耳にしたであろう「お前はもう死んでいる」というセリフが登場します。アニメでは多用されていましたが、このセリフが原作マンガにどれくらい登場するのか、作品を読み直して確認したところ意外な事実が判明しました。
何度も真似した名ゼリフが意外にも?
1983年から「週刊少年ジャンプ」で連載されたマンガ『北斗の拳』は、2023年に連載開始40周年を迎えました。それを記念して、2023年10月7日より『北斗の拳 40周年大原画展 ~愛をとりもどせ!!~』が、六本木・森アーツセンターギャラリーにて開催されます。
そんな『北斗の拳』と言われて思い出すのが、主人公・ケンシロウが敵を倒した時のキメゼリフ「お前はもう死んでいる」という言葉ではないでしょうか。しかし、アニメでは何度も聞いたこのセリフは、原作では思いのほか登場していないとも言われています。そこでこの記事では、セリフ「お前はもう死んでいる」が作中で何回登場するのか調査しました。
ちなみに、原作担当・武論尊先生は公式サイトの「北斗の拳生誕30周年記念特別インタビュー」にて、このセリフの原型は、1983年に「フレッシュジャンプ」に掲載された読切版(作画担当の原哲夫先生単独による執筆)に登場したセリフ「あんたもう死んでるよ」だったと語っています。
そして、今回調査を行った結果、マンガ『北斗の拳』において「お前はもう死んでいる」と、はっきりケンシロウが発した回数は1回だけということがわかりました。「お前はもう死んでる」といった一字違いのセリフや、ニュアンスはそのままに別の形になった「きさまはすでに死んでいる!」といったセリフなどは見られましたが、一言一句同じセリフは1回しか登場していませんでした。
その記念すべき1回の「お前はもう死んでいる」が描かれているのは、コミックスでは7巻収録の「静かなる巨人!の巻」です。幽閉されているトキの救出に向かうケンシロウが、邪魔をしようと立ちはだかった男・カシム(アニメ版で名前判明)に対してこのセリフを口にしています。身体が意志に反して動く秘孔「頭顳(ずせつ)」を突かれたカシムは「なのォろ…わ」と、何かを言い残そうとしたのか謎の断末魔の叫びをあげて死んでいきました。
また、コミックス1巻「心の叫びの巻」には、ジード相手に「お前はもう死んでる」とのセリフが登場します。細かいようですが、「い」の字が足りず、一字違いのセリフになっていました。技を喰らったジードが「い!?」と断末魔をあげているのは、何かの偶然なのでしょうか。
上記のふたつのシーンを比べてみると、断末魔の叫びのバリエーションの変化も感じられます。1巻では「い!?」とシンプルに表現されていますが、7巻になると「なのォろ…わ」と、より複雑化しています。悪役のキャラの濃さも見どころの『北斗の拳』は、彼らの断末魔も人気で、「敵キャラの独特な最後の叫びも面白味のひとつ」「北斗の拳の敵が印象残るようになった原因は断末魔」「最後に何を言いたかったのか気になる」と、今も注目しているファンは少なくありません。
ほかにもニュアンスは同じでも、微妙に違うセリフがいくつか登場しています。4巻「マミヤの賭け!の巻」では、ケンシロウは牙一族のマダラの左目部分を叩き潰すと、「きさまはすでに死んでいる!」と言い放ちました。同じ意味合いの言葉ですが、相手を「お前」と呼ぶか「きさま」と呼ぶかでも印象が違ってきますね。
そして、牙一族の牙大王には、もう少し丁寧な言い方が使われました。秘孔「大胸」を突かれた牙大王に、ケンシロウは「おまえの肉体はすでに死にはじめている」と、内側から身体が破壊される北斗神拳の怖さがより分かる一言を言っています。そして、コミックス27巻の最終話「さらば愛しき者たちよ…そして荒野へ…の巻」では、名もなきザコキャラに対して「おまえはすでに死んでいる!!」とのセリフを口にしていました。
また、コミックス5巻「怒拳四連弾の巻」では、数々の悪行を繰り返したジャギに対して怒りの一撃を加えたケンシロウは、「あと数秒できさまの肉体は地上から消え失せる…」と言い放ちます。ただ死ぬのではなく「肉体が地上から消え失せる」という表現に、特にケンシロウの怒りを強く感じました。
どれも意味合いは似ているため、ケンシロウが「お前はもう死んでいる」と何度も言っていたように感じるのも納得ですが、こちらは原作では1回しか登場しないセリフです。同じセリフは使わないという作者のこだわりがあるのかもしれません。気になる方は、改めて『北斗の拳』を読み直してみてはいかがでしょうか。
(LUIS FIELD)