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『呪術廻戦』本編とはだいぶ違う? ふたつの「元ネタ」がある「両面宿儺」伝説

大ヒット作『呪術廻戦』の最大の敵として登場する「呪いの王」両面宿儺には、「元ネタ」があります。元ネタの両面宿儺はどんなのだったか、2つの側面から迫ります。

「英雄」でもある両面宿儺

アニメ『呪術廻戦』の両面宿儺の姿 (C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
アニメ『呪術廻戦』の両面宿儺の姿 (C)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会

 人気作『呪術廻戦』が、アニメ第2期でさらなる盛り上がりを見せています。アニメは色々とショックな展開になる「渋谷事変」が開幕しました。このエピソードでは、主人公・虎杖悠仁の身体に宿っている「呪いの王」両面宿儺(りょうめんすくな)がある惨劇を起こしたことも話題になっています。

 さて、人気の同作で最終的に最大の敵となることが予想される両面宿儺ですが、彼は何もないところから生まれた訳ではなく「元ネタ」があります。今回は元ネタの両面宿儺を「神話・伝承」と「現代ネット怪談」のふたつの側面からご紹介します。

●神話・伝承の両面宿儺

 両面宿儺に関する記述は非常に古くから存在し、377年ごろ、第16代仁徳天皇の時代、飛騨に「両面宿儺」という化け物が現れたとの記録が『日本書紀』にあります。両面宿儺は身の丈一丈(約3m)、ふたつの顔に4本の手足、2本の剣と4組の弓矢を持つ怪物で、当時の朝廷に逆らい人々を苦しめたため、難波根子武振熊(なにわのねこたけふるくま)に討たれたとあります。

 この怪物としての両面宿儺の姿は、『呪術廻戦』の両面宿儺とはあまり一致しませんが、別の「週刊少年ジャンプ」の作品にも出ています。人気作『地獄先生ぬ~べ~』(原作・真倉翔先生、作画・岡野剛先生)に登場する両面宿儺は、3mどころではない巨体にふたつの顔、6本の腕と姿がアレンジされていますが、おおむね『日本書紀』版の両面宿儺に近い姿です。

『ぬ~べ~』では「御鬼輪」のある山奥の洞窟に封じられていて、山の気を吸ってパワーアップする設定になっていました。ぬ~べ~の鬼の手の「100%」でないと倒せなかったこの敵は、オリジナルの両面宿儺に土蜘蛛伝説の要素が足されたような設定で、原作者の真倉先生による設定の妙味が感じられます。

 また、神話・伝承の両面宿儺には別側面があるようです。飛騨の伝説では両面宿儺は「英雄」であり、人びとに愛される存在として伝わっています。出羽が平(現在の岐阜県高山市郊外)の洞窟から現れた両面宿儺は、容姿こそ異形であったものの「救世観音の示現なり」と告げて農耕や信仰をについて人びとに教えたため、飛騨の民衆には深く尊敬されるようになりました。

 その他、位山(くらいやま)にいた鬼神・七儺(しちな)を打ち取ったり、日龍峰寺の悪龍を退治したりと、『日本書紀』に描写される人びとを苦しめた怪物・両面宿儺の姿と大きく異なります。両面宿儺は正史においては朝敵ですが、東北の蝦夷(えみし)や九州の熊襲(くまそ)のように、地方の豪族として強い力を持ったため、朝廷から敵視されて怪物として討伐された人物がモデルである可能性があるようです。

 余談ですが、日本の昔話でおそらくもっとも有名であろう『桃太郎』は、吉備津彦命(きびつひこのみこと)が温羅(うら)という鬼を討った伝説が元になっています。

『桃太郎』を下敷きにしたクール教信者先生の『ピーチボーイリバーサイド』にはキビツミコトという桃太郎がルーツと思われるキャラクターが登場しますが、多分、おそらく名前の由来は吉備津彦命です。温羅は伝説では身長4mで妖力を操り、怪力で変化能力を持った怪物と描写されていますが、そのモデルは朝廷への恭順を拒否した吉備国(きびのくに・現在の岡山県周辺)の豪族・下道臣(しもつみちのおみ)ではないかとの説があります。両面宿儺伝説と似たものを感じますね。

【画像】ビジュアルは違うけど、ふてぶてしい態度は似てる? 飛騨地方に伝わる「両面宿儺の像」を見る(3枚)

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