名作RPG『ウィザードリィ』 少年たちを冒険へ駆り立てた、世界観とメディアの力
1987年に発売されたファミコン版『ウィザードリィ』は、鍛え上げたキャラクターでも簡単に全滅するシビアさとレアアイテム収集の面白さ、末弥純氏のデザインを限界まで再現したモンスタービジュアル、謎の多い世界観など多くの魅力をあわせ持ち、当時のプレイヤーたちを魅了。あるメディアもプレイヤーたちの「冒険」を盛り上げていました。
「いしのなかにいる!」…一瞬のミスでパーティ全滅の理不尽

1987年、ファミリーコンピュータ向けに移植されたRPG『ウィザードリィ』は、その独特のゲームシステムと世界観で多くのファミコン少年たちに強い印象を与え、さらに未来のクリエイターたちにも大きな影響を与えました。当時『ウィザードリィ』にハマった経験を持つゲームライターの早川清一朗さんが、思い出を語ります。
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全滅に次ぐ全滅を繰り返し、ようやく育て上げたまともに戦えるパーティが、テレポート魔法「マロール」の座標入力ミス一発で壊滅した瞬間は、忘れられるものではありません。それでも数日後には新たなキャラクターを育成するために、最初から「侍」キャラクターを作れるボーナスポイント18以上を求めてリセットを繰り返していました。
友人に借りて遊び始めたファミコン版『ウィザードリィ』(以下、Wiz)は、それまで遊んできたRPGとは、何もかもが違っていました。グラフィックがあるのはモンスターとマップのみ。プレイヤー側は何もかもがテキストのみという潔さ。舞台となる城塞都市に何種類もある宿屋の違いが分からず、連射パッドを使い「かんいしんだい」で回復するという大失敗もやらかしました(編集部注:簡易寝台は1回の宿泊でHPが1しか回復しないため、全回復しようとするとキャラクターの加齢を進めてしまう)。
モンスターに遭遇すればあっさりと殺され、パーティが全滅したら他のパーティを編成して死体を回収して蘇生する必要があり、蘇生に失敗すればキャラクターロストとなり、苦楽を共にしてきたキャラクターとは二度と会うことができません。
死にやすい低レベルの時期をどうにか乗り越えても、迷宮最下層に足を踏み入れればポイズンジャイアントのブレスになぎ払われたり、グレーターデーモンの群れに強力な攻撃呪文「マダルト」の連打をくらったり、雑魚にしか見えないバンパイアに2つもレベルを下げられたりと、現在のように各項目に親切なチュートリアルがついている時代からは考えられないほどの地味さと不便さと理不尽さをあわせ持っていた本作でしたが、なぜかやり始めると止まらない、魔法のような魅力を放っていました。当時の筆者の頭の中には、テキストだけの城塞都市の風景が、はっきりと映し出されていたのです。
ただ本作は、ほぼ同時期に『ファイナルファンタジー』が発売されたこともあってか、注目度もそれほど高くはなく、雑誌の中には『Wiz』の情報をほとんど載せていないものもありました。
そんななか、ある雑誌が大々的に『wiz』の特集を行ない、本作の運命を大きく変えたのです。