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『北斗の拳』に第3の作者? 名言と北斗神拳を生んだ人物が参考にしたのは

『北斗の拳』は1983年から「週刊少年ジャンプ」で連載が始まりますが、実は事前に「フレッシュジャンプ」に掲載された『北斗の拳(読切版)』で北斗神拳が描かれていました。また作品の肝となる、あの名ゼリフと北斗神拳は担当編集者が発案したものだったのです。その発想のヒントになったものは何だったのでしょうか。

「経絡秘孔」に出会ったことで誕生した「北斗神拳」

『北斗の拳 究極版 1巻』(コアミックス)
『北斗の拳 究極版 1巻』(コアミックス)

 連載開始40周年で新作アニメシリーズの製作が発表された『北斗の拳』は、1983年から「週刊少年ジャンプ」に連載され、大人気作となりました。同作は初の連載が打ち切りになった原哲夫先生が、背水の陣で発表した読み切りマンガがもとになっています。

 人体にある「経絡秘孔」を突いて身体を内部から破壊する「北斗神拳」や、「お前はもう死んでいる」などのセリフの原型も、すでに盛り込まれていました。その北斗神拳の原案を出したのは原哲夫、武論尊両先生ではなく、担当編集者だったのです。

 北斗神拳を編み出したのは、当時の原先生の担当編集者・堀江信彦さんでした。堀江さんはその誕生の秘密を、『北斗の拳 究極版』(コアミックス)第1巻の巻末の「特別解説『北斗の拳』誕生秘話」で語っています。

 原先生は1982年『鉄のドンキホーテ』で連載デビューを勝ち取るものの、僅か10回で連載が終了してしまいます。堀江さんは失意の原先生を励まし、原先生の迫力のある画風を活かすために「拳法マンガ」に切り替えることを勧めました。

 また、作品を成功させるには読者を惹きつける「必殺技」が欠かせません。堀江さんは寝ても覚めても、斬新な必殺技のことばかりを考えていました。そんなある日立ち寄ったのが、神保町にある中国書籍専門店でした。目に付いた赤いカバーの本には「経絡秘孔」の研究に没頭した医学生が、眼病に良いとされるツボを過剰に刺激したためにかえって目が悪くなったというエピソードが、美談のように書かれていたそうです。

 堀江さんはその本を見た時の衝撃を次のように語っています。

「しかし、その笑えない美談は、私には電撃的鳥肌ものでした。『これだ! やっと必殺技見つけたぞ!  人体のツボを突くと肉体が破壊されるんだ!!』『これなら、非力な奴でもでかい奴を難なく倒せるぞ!!』『少年漫画らしい絶妙なアイデアだ!!』」

 そして、堀江さんがツボを押して人体を破壊するアイデアを少し大げさに原先生に伝えたことが、北斗神拳の圧倒的な破壊力を生み出します。さらに堀江さんは、「北斗は死を司る神」という中国の星座の神話から、「北斗神拳」と名付けたことも語っていました。

 そして堀江さんのアイデアが実を結んだのが、1983年に「フレッシュジャンプ」に掲載された読み切り版『北斗の拳』です。主人公の名前は霞拳四郎(かすみけんしろう)で、北斗神拳で経絡秘孔を突くと時間差で敵の肉体がはじけ飛ぶ場面も、名セリフ「お前はもう死んでいる」の原型となる「あんたもう死んでるよ」も、この読み切り版に登場しました。

 読切が決定的に連載版と違うのは、現代劇で拳四郎も高校生という点です。原作担当の武論尊先生が参加してから、荒廃した近未来の設定と北斗神拳と南斗聖拳の戦いの歴史が加わって、私たちの知る『北斗の拳』が完成しました。

『北斗の拳』の最大の魅力のひとつである北斗神拳を考案した堀江さんの功績は大きく、一部では『北斗の拳』第3の作者と呼ばれています。新作アニメでは北斗神拳の「内部からの人体破壊」がどのように描かれるのか、気になるところです。

(LUIS FIELD)

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