【TVドラマ】『死役所』ドライなのに切ない、奇妙な「役場」の物語
2019年10月16日より、テレビ東京で放送がスタートしたドラマ『死役所』。原作はあずみきし先生の同名マンガで、さまざまな理由で命を終えた人びとがたどり着く、不思議な役場での人間ドラマが描かれています。「役所の手続き」というドライさの裏にある、温かみと怖さが混在した物語はもちろん、キャストの怪演も必見です。
死後の手続きから始まる、世にも奇妙な人間ドラマ
人は死んだら、どこに行くのか。私たちが漠然と頭の中に抱く疑問に対して、不思議な想像を膨らませてくれるのが、あずみきし先生のマンガ『死役所』です。2019年10月16日(水)からはテレビ東京でドラマが放送され、含みのあるストーリーにさまざまな声が寄せられています。
老衰に病死、事故死、自殺、他殺、あるいは死産。あらゆる理由で命を終えた人がたどり着く、「死の手続きをする場所」。それが『死役所』の舞台です。そこでは日々、事情を抱えた死者たちが自分の死因に関係する課(自殺課、他殺課など)を訪れ、書類を記入して成仏へと向かいます。
成仏のために、書類に必要事項を記入する。人の生き死にに対して、これほどドライな行動はあまりないのではないでしょうか。しかし、手続きでは「死因」について詳細に書かないといけません。「死役所」にやってくる人びとは、ここで自分の人生と向き合わなくてはならなくなります。
いじめの苦しさ、親からの虐待、突然の事故。中には思い出したくもない過去に、苛立ちをあらわにしたり、悲しみを爆発させたり……。人生これからだという時に、なんとか折り合いをつけて次へと進まなくてはならない人びとを見ると、胸を締め付けられます。
原作では、各話で自分の人生に別れを告げた人びとの、現世でのエピソードと生前の楽しそうな写真が添えられます。
彼らが晴れやかな気持ちで旅立つとき、現世でも同じような感動的ストーリーが展開していることもあれば、思いも寄らない結末になっていることもしばしばです。時に冷たく、時に温かく人びとの「死出の旅路」を描いています。
スッキリとしないこともあるけれど、満足度の高い重厚感を感じさせてくれるのが、本作の魅力です。
そんな死者たちの手続きを代行してくれるのは、ひと癖もふた癖もある役所の人間たち。中でも主人公のシ村は、常に笑顔を絶やさず、時に相手の心情を察しない無機質な対応を取ります。
そんなシ村を演じる、松岡昌宏さん。どちらかというと人間味の詰まった彼が演じるシ村のミステリアスな雰囲気が、思った以上にどハマりでした。作中にはグロテスクなシーンも多数登場しますが、ドラマ内でもそれを忠実に、ギリギリのところで再現。テレビ東京の本気度を垣間見た気がしました。
ドラマでは、原作マンガとはまた違うストーリーが展開しています。放送も始まったばかり。原作と一緒に、奇妙で味のある物語を楽しみたいところです。
(サトートモロー)