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実写『ワンピース』はルフィの性格違う? 「リーダシップ強め」の声も

説教のかわりに問いかける実写ルフィ

●説教のかわりに問いかける実写版のルフィ

メリー号を見つめるルフィ (C)尾田栄一郎/集英社
メリー号を見つめるルフィ (C)尾田栄一郎/集英社

 原作におけるルフィは、嵐のような存在です。海賊王を目指す、ルフィという理解不能なほどスケールの大きな人物が現れることによって、各地に大きなイベントが発生し、変化が訪れます。物語がだいぶ進まないと、ルフィの内面が描かれない理由のひとつでしょう。

「人間嵐」であるルフィは弱気になっている人、モヤモヤしている人に強烈な熱量で説教(あるいは一喝)することで事態を動かします。原作ではゼフへの恩返しのために、命を捨てようと無抵抗になっているサンジの胸ぐらをつかんで「死ぬことは恩返しじゃねぇぞ!!!そんなつもりで助けてくれたんじゃねェ!!!生かしてもらって死ぬなんて弱ェやつのやることだ!!!」と叫びました。

 熱い名シーンですが、実写版ではこういったシーンはまるごとカットされています。かわりにルフィは問いかけ、対話していました。下記は実写ルフィとナミのやり取りです。

 ルフィ「(お前にも)何より大切な夢があるんじゃねぇのか?」

 ナミ「誰もが自由に夢を追えるわけじゃない」

 ナミがアーロンから村を買い戻すため、泥棒に手を染めていることを知っているファンからすると、やり取りの重要性が強く感じられますね。他にもゾロとナミがお互いを知るために、バーで飲み比べをしながら生い立ちを当て合う交流も実写版『ONE PIECE』オリジナルの魅力的なシーンです。原作が舞台的な盛り上がりをするのに対し、実写版では文字通り「海外ドラマ的」です。

 その結果、海賊団を結成しようとするルフィのゴールに対する意識や、船長としてのリーダーシップが強めに演出されています。「お前は本当はなにをしたいのか? 人生の目的はなんだ?」と問いかける、啓発的なリーダーシップを発揮する「メンター」のような側面が感じられるかもしれません。

 ルフィは海軍中将の孫であると同時に革命家・ドラゴンの息子であり、海賊王になろうとするスケールの大きな男です。しかも幼少期には、「世界の理不尽」を体感しています。そんなルフィの解像度を高めていけば、彼のリーダーやメンターとしての側面が描かれるのは自然な演出ではないでしょうか。

 実写版『ONE PIECE』はマンガやアニメの演出をそのままなぞるのではなく、原作のエッセンスを抽出してふさわしい演出に置き換えています。こういった細やかな描写の積み重ねが、実写ドラマとしての『ONE PIECE』の強度を高めているのは間違いありません。

 実写版のルフィは原作と性格が変わったのではなく、ひとりの人間として「解像度が高まったルフィ」なのです。

(レトロ@長谷部 耕平)

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