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『ガンダム』他サンライズ作品のクレジットでよく見る「矢立肇」って何者? 謎の企画者の正体

「矢立肇」。ガンダム、ボトムズ、などなど、サンライズ作品にいつも明記されている、その企画者の正体とは?

サンライズの「謎の企画マン」

『機動戦士ガンダムI』DVD(バンダイビジュアル)
『機動戦士ガンダムI』DVD(バンダイビジュアル)

 現在「バンダイナムコフィルムワークス」となったサンライズが長いあいだ「サンライズ」という一社独立で数々のアニメーション作品を世に送り出していたことは、多くのアニメファンがご存じのことと思います。

 1976年に、それまで事実上の東北新社の下請け的な立場だった「創映社」「サンライズスタジオ」のスタッフが、新たに設立させた「日本サンライズ」(後にサンライズ)。その記念すべき第一作がファンの間で伝説となっている1977年作品『無敵超人ザンボット3』。そして1979年に三作目として送り出したのが、ご存じ『機動戦士ガンダム』です。

 これら『ザンボット』から始まる、数々の「ガンダム」シリーズ、『伝説巨神イデオン』『装甲騎兵ボトムズ』『聖戦士ダンバイン』『銀河漂流バイファム』、「魔神英雄伝ワタル」シリーズ、『勇者エクスカイザー』以後の「勇者シリーズ」『絶対無敵ライジンオー』に続く「エルドランシリーズ」等々、1980年代から2000年代を彩るたくさんの作品のオープニングには、必ず「企画 矢立肇(やたてはじめ)」という文字が表記されています(ただし『ザンボット』のみ「企画 日本サンライズ」表記)。

 しかし、監督や作画などのスタッフはイベント等メディアに登場することはあっても、サンライズ作品のほぼすべてに名を刻んでいる「矢立」という人物が登場したことはありません。

 実は「矢立肇」というのは、その作品企画に携わった複数の人々を総称した、いわば「サンライズ企画室(部)のペンネーム」なのです。

 たとえば『ガンダム』の場合、企画アイデアには、当時の企画部部長、企画室デスク、富野由悠季(当時は喜幸)監督、作画ディレクターの安彦良和、シリーズ構成の星山博之、SF考証と脚本の松崎健一他、様々な人々が参加協力したことで成立しています。

 しかし当時のスタッフタイトルは、すべて手書きで、表記する文字数にも限りがありました。さらに権利の関係もあり、当時のTV番組では、こうした「共同ペンネーム」というのは珍しいことではありませんでした。

 たとえば、東映の特撮シリーズや、当時のサンライズが下請け製作を担っていたアニメ番組のオープニングに表記されている「八手三郎(はってさぶろう)」さんも、ほぼ同様です(ただ、その成立や詳細にはそれぞれ違った経緯があります)。

 サンライズの場合は『ザンボット』を経て『無敵鋼人ダイターン3』を放映するに当たり、企画室のペンネームを作ることに決め、当時の企画室デスクと部長等が相談。俳人、松尾芭蕉が有名な「奥の細道」の第一歩を踏み出した地に刻んだ「矢立(やたて)のはじめ」にちなんで名付けました。

 これには「新たな会社を立ち上げ、これから多くの苦難に満ちているだろう細く長い道を一歩一歩歩んでゆこう」という創立者たちの決意が込められていますし、同時に「やったぜ! 初めて!」というシャレもあったのだそうです。

【画像】ラスト1分が衝撃! 「矢立肇」による名作アニメを見る(5枚)

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