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『ガンダム』他サンライズ作品のクレジットでよく見る「矢立肇」って何者? 謎の企画者の正体

「矢立肇」の中心となった人物

『無敵超人ザンボット3』DVDメモリアルボックス(バンダイビジュアル)
『無敵超人ザンボット3』DVDメモリアルボックス(バンダイビジュアル)

 ただし、内情を知るものとして記しておきたいのは、この矢立肇は、その中心となった初代企画部長の、故・山浦栄二その人を指す名前でもあったということです。

 後に、三代目の社長となった山浦さんは、私も所属していた企画部のボスであり、サンライズの独立前から、オリジナル作品の『0(ゼロ)テスター』や『勇者ライディーン』を企画発案し、以降、続いていく上記を含むたくさんの作品の成立の根幹を担ってきました。

 やがて、経営側の職務が増え企画に関わる時間がとりにくくなった山浦さんに代わり、80年代後半からは、彼が育てた次世代が企画を引き継ぎ、二代目・矢立として前述の『ワタル』や『機甲戦記ドラグナー』「勇者シリーズ」「エルドランシリーズ」等々の企画を発案して行くことになります。

 もちろん、この次世代作品でも、矢立の名前の中には、企画に参加協力した幾人ものクリエイターが含まれています。

 作品によっては、「原作」という別の表記で個人名が出ている人もいますが、TVアニメの「企画」は、決してひとりのクリエイターだけでなし得るものではなく、多くの人々がいてこそ成立出来るものであること。そこにはその「芯」となるものが存在したことを、当時のサンライズは大切にしていたのです。

 つまり「矢立肇」は、サンライズのオリジナル作品の代名詞であり、矢立がいてはじめて「オリジナルのサンライズ」は存在できたともいえるのです。

 もし、あなたがサンライズ作品を応援してくださっていたなら、ぜひ、この「矢立肇」の名もご記憶いただけたらと思います。

【著者プロフィール】
風間洋(河原よしえ)
1975年よりアニメ制作会社サンライズ(現・バンダイナムコフィルムワークス)の『勇者ライディーン』(東北新社)制作スタジオに学生バイトで所属。卒業後、正規スタッフとして『無敵超人ザンボット3』等の設定助手、『最強ロボ ダイオージャ』『戦闘メカ ザブングル』『聖戦士ダンバイン』『巨神ゴーグ』等の文芸設定制作、『重戦機エルガイム』では「河原よしえ」名で脚本参加。『機甲戦記ドラグナー』『魔神英雄伝ワタル』『鎧伝 サムライトルーパー』等々の企画開発等に携わる。1989年より著述家として独立。同社作品のノベライズ、オリジナル小説、脚本、ムック関係やコラム等も手掛けている。

(風間洋(河原よしえ))

【画像】ラスト1分が衝撃! 「矢立肇」による名作アニメを見る(5枚)

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