『ガンダム 鉄血のオルフェンズ』放送から8年 たった1個のパンに救われた「ヒロイン」とは
非情な戦争が描かれるガンダムシリーズのなかで、「人生が180度逆転した少女の心温まるエピソード」もありました。2015年10月から放送開始した『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』で描かれた、たった1個のパンと、少年との出会いを振り返ります。
たった1つのパンで人生を大逆転した少女のアトラ

8年前の2015年10月4日は、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』が放送された日です。ガンダムシリーズ作品では、宇宙に進出してもなお人類が争いを繰り返しており、非情な戦争が物語に描かれることが多いのですが、『鉄血のオルフェンズ』では、珍しく心あたたまる前向きな物語が描かれています。たった1個のパンと少年少女の出会いをきっかけに始まった、波瀾万丈のストーリーを振り返ります。
波乱万丈の人生を歩んだ少女の名前は、アトラ・ミクスタ。彼女は主人公の三日月・オーガスにとってのヒロインであり、彼女がのちに所属する「鉄華団」という組織で雑用や炊事を担当することになります。
それまでのアトラは年上の女性ばかりの店で、下働きとして働く少女でした。アトラはそのお店で、悪質ないじめにあったり、何か失敗をすると食事を抜かれたりしながら、仕事をしていました。そんな日々を過ごしていた時、とうとう空腹のため眠ることができず、お店を飛び出すのでした。
帰る場所もなく路頭に迷ったアトラは、ベンチに座ってパンを食べているひとりの少年と出会います。その少年こそ、当時まだ幼かった三日月で、アトラと同じくらいの年齢ですでに仕事をしており、自分で稼いだお金で買ったパンを食べている最中でした。
アトラは同じ年ぐらいの男の子がパンを食べるのを見守ります。その瞬間、アトラと三日月は初めて目が合います。アトラの様子を見て三日月は、「見ててもやらないよ、これ俺が働いて買ったんだ」と話します。
対してアトラは「いらないもん、私も働くから」と言います。その言葉を発した瞬間、空腹で限界だったアトラはその場で力尽きて動けなくなります。その状況を正面で見ていた三日月はため息をついて、自分がパンを買った店に戻ります。そして、そのお店の店主の女性に、自分が稼いだ残りのお金を渡して「これしかないや。何でもいいから、これで食いもの売って」と伝えました。
突然の申し出に店主の女性は「どうしたの?」と聞き返します。三日月はお店の外で力尽きているアトラを指さして「あいつ腹減りすぎて立てないみたいなんだ」と言います。心配した店主の女性はアトラを迎え入れ、お店でパンをひとつ渡しました。
この時の三日月との出会いがきっかけで、アトラはその店主の店で雇われて、働くことになります。ひどいいじめに遭い続けた劣悪な環境から、自分を受け入れてくれる良い環境で働けることになったのです。そして後に成長したアトラは、自分にパンをくれた三日月に好意をもち、彼の所属する「鉄華団」で働きたいと志願し、運命をともにするのです。
その後アトラは劣悪な環境から脱出しただけでなく、好意を抱いていた三日月の子供を宿すことになります。アニメ第2期の最終回では、子供と生活するシーンも描かれています。
たったひとつのパンを恵んでもらったことで人生が大きく変わったアトラのエピソードは、大規模な戦乱で文明が大きく後退し、子供の人身売買が公然と行われるという『鉄血のオルフェンズ』の世界観において、「未来」や「希望」を感じさせる物語として、多くのファンに記憶されています。
(LUIS FIELD)