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ブラック・ジャックの髪が「半分白い」理由は? 裏にある「未完」の壮絶な復讐譚

巨匠・手塚治虫先生の代表作のひとつであるマンガ『ブラック・ジャック』は、天才外科医ブラック・ジャックの活躍を描き長年愛される名作です。主人公ブラック・ジャックの特徴のひとつが、半分だけ白くなった髪型でした。この記事では、そんな髪型になった原因と、物語で描かれる彼の復讐劇について振り返ります。

白い髪の毛は過去の惨劇が原因

「二人目がいた」が収録された『ブラック・ジャック』8巻(手塚プロダクション)
「二人目がいた」が収録された『ブラック・ジャック』8巻(手塚プロダクション)

 1973年から週刊少年チャンピオン(秋田書店)で連載されたマンガ『ブラック・ジャック』は、巨匠・手塚治虫先生の代表作のひとつです。本作は、医学博士でもあった手塚先生ならではのリアルな描写で、主人公である外科医ブラック・ジャックの活躍が描かれています。連載50周年を記念して、2023年10月6日より東京シティビューにて「手塚治虫 ブラック・ジャック展」が開催されるため、注目しているファンも多いでしょう。

 ブラック・ジャックといえばその独特な風貌が印象的で、なかでも半分白くなった髪型に目がいきます。この記事では、そのような髪の色になった原因と、そこから始まる彼の復讐劇について振り返ります。

 彼の髪の毛が白くなった理由は、手塚プロダクション版のコミックスでは、5巻の第5話「不発弾」というエピソードで描かれます。かつて、曲り浜の海岸沿いで自衛隊による不発弾の撤去作業が行われていました。不発弾を除去し終え、海岸に家を建てるために急いでいた作業員は、まだ危険が残るなか注意を促す立て札を片付けてしまいます。

 それから3年後、取り残されていた不発弾が爆発し、母親と男の子が事故に巻き込まれてしまいました。その男の子が、少年時代のブラック・ジャックだったのです。瀕死の重傷を負ったブラック・ジャックは、外科医の力により一命をとりとめます。しかし、その時の恐怖で、髪の毛は白く変わってしまったのでした。そして変わり果てた母親の姿を目にした彼は復讐を決意し、爆発事故への責任が大きい関係者が5人いることを突き止めます。

 ひとり目は、自衛隊の特別作業班で処理作業にあたっていた井立原です。彼は役人に金をつかまされ、まだ不発弾が残っているかもしれないのに立て札を片付けてしまいました。そんな彼を、ブラック・ジャックは気球で地雷が埋められた島に連れ出し、ひとりにさせます。不発弾によって自身が味わった同じ恐怖を井立原に味合わせようとしたのでしょう。

 地雷を踏み重傷を負った井立原を治療したブラック・ジャックは、彼を脅し当時の出来事を自白させます。命までは奪わない復讐方法に、ブラック・ジャックの外科医としての良心を感じました。

 復讐対象のふたり目は手塚プロダクション版コミックス8巻の第8話「二人目がいた」というエピソードで描かれます。不発弾処理の現場監督をしていた姥本のもとにたどり着いたブラック・ジャックでしたが、彼はすでに末期がんで死んだも同然のような状態でした。姥本の娘に頼まれ、延命措置を施すブラック・ジャックでしたが、復讐相手の命を救うための手術に複雑な思いを抱きます。憎い相手が麻酔で眠っている姿を見て、まともに手術ができるのか、確かに難しいところです。

 幸い手術は成功し、姥本の命は救われます。しかし1年後、姥本の娘がブラック・ジャックのもとに現われ、姥本が心臓発作で死んだことを告げました。元気にしてから復讐するつもりだったと口にするブラック・ジャックに、娘は残りの3人にも復讐するのか問いかけます。彼の返答は、復讐について肯定も否定もせず、娘に部屋から出ていくように促すのみでした。

 不発弾に絡むブラック・ジャックの復讐劇は、ふたり目までが描かれており、残りの3人については描かれていません。1989年に手塚先生は逝去され、この復讐劇の結末は誰にも分からない状態となりました。もし完結まで描かれていたら、残りの3人への復讐はどう描かれたのか、そもそも復讐は行われたのか、気になる限りです。

(LUIS FIELD)

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