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ラスボスは「資本主義の神」 漫画家・武井宏之が語る「シャーマンキング」の新章、『SKY』に込めた意味とは?

新章のタイトル『SKY』の由来とは?

地球すべてのアーカイブであるグレート・スピリッツこそが「クラウド」。そこにアクセスできる能力が、これから先の戦いで描かれていく。『SHAMAN KING THE SUPER STAR』第5巻より (C)武井宏之/講談社
地球すべてのアーカイブであるグレート・スピリッツこそが「クラウド」。そこにアクセスできる能力が、これから先の戦いで描かれていく。『SHAMAN KING THE SUPER STAR』第5巻より (C)武井宏之/講談社

――ところで、なぜ新章のタイトルが『SKY』なのか、聞いても大丈夫でしょうか?

武井 わかる人にはわかるんですが、「花」(フラワーズ)、「星」(スーパースター)と来たら次は「空」(SKY)と昔から決まってて。正確には『SHAMAN KING YARD(シャーマンキング ヤード)』で、略して『SKY』。「ヤード」は「場所」って意味で正しくは「庭」なんだろうけど、もう少し広い意味で使ってる……そんなところです。

――「Y」が「場所」、全部合わせた「SKY」は「空」……。これは両方に意味がありますよねきっと。

武井 「SKY」っていうのは別の次元という意味も持たせていて、今の話のなかだと「クラウド」ですね。

――なるほどクラウド! 確かに「上の方にある別次元の場所」みたいなイメージがありますね。というか「クラウド」という概念が作品に出てきたときは驚きました。自分の中ではデータ管理の最先端というイメージでスピリチュアルな方向とは逆の超現実的な存在だったので、これを持ってくるんだ!? と思ったんですね。

Y田 先生がある日突然、思いついた! って言い始めたんです(笑)

武井 次は王道の少年マンガにしたい、となった時から、新しい要素として「ヘンシン」させたかったんです、キャラに。それでクラウド。戦い方が武器とか霊とかじゃなくて、自分が生身で戦うのがいいっていうのがあって。あとは、そもそものテーマとして大事にしてることで「神様は拝むものじゃなくて自分のなかにある」って言ってるんだけど、そこに気付く、自分が変わることも含めての「ヘンシン」。

――「ヘンシン」……劇中では「ニュートランス」と言っていますね。あの設定にはそういう思いが込められていたんですね。

武井 主人公がいて、後ろに何か強いのがいて、そいつらが戦うっていうと結構難しいのが「主人公がんばってない問題」。いくら精神的に戦ってるって言っても、キャラに対してお前が汗かけとか思ったりして。

 だからニュートランスで本人が一体になって、痛みとかを味わいながら成長して欲しい。あと強いて言うならサイズ比問題かな。X-LAWSの機動天使とか、同じ画面に収めようとすると結構カットが限定されるので、なるべくキャラのサイズを整えたいのはあります。「ヘンシン」なら、サイズの変更も自在なので許される感あるしね(笑)

――『マルコス』においても機動天使は登場しますが、作画のジェット草村先生とはそういう話をしたことはあるんですか?

武井 あります。苦労するのは実際に描く人なので、見せ方をどうするかとか、いろいろ話したりはしました。それ以前に『マルコス』の問題は別のところにたくさんあったしね。

――なるほど……。ではまとめると、「クラウド」を利用した「ヘンシン」である「ニュートランス」は、憑依合体、オーバーソウルに続く概念であると同時に、「フラワー・オブ・メイズ」では必須の能力だと『SUPER STAR』のなかで語られていますが、作劇的な面から言うと、それは生身で戦う描写をするために考えられたもので、バトル中心のマンガを目指す『SKY』ではガンガン熱い戦いが描かれるというわけですね!

武井 そう。なので、花とかその他のキャラがどうやってそこにたどり着いて、どういう感じになるのか、『SUPER STAR』はその辺も楽しみにしていて欲しいかな。

――ありがとうございます。それではこのへんでもう少し話を広げて、携わっている活動全体のことについてお聞きしたいと思います。普段からキャラクターデザインをはじめ多くの依頼が来ていると思いますが、例えば最近のものだと、アニメ『ビックリメン』がありますね。キャラクター作りへの期待が高いからこそ、そういう仕事が来るのは当然として、先生自身もその部分がお好きなんじゃないだろうかと思うんですが、いかがですか?

武井 大好きですよ、やっぱり一番楽しいところはですね、ただキャラクターデザインってよりは、世界観ひっくるめての構成なんですよね。キャラ同士のバランスだったり、役割だったりで世界観を作っていく。だからクレジットでもキャラクター「デザイン」じゃなくて「原案」。線画に起こす作業をしないという意味でもあるけど、ラフを大量に描いて、それを中心にやるからってことですね。

――確かに『ビックリメン』でも、キャラクター「原案」になっています。そういう意味があったんですね!

武井 メカもね。もっとチャレンジしたいので挑戦待ってます!

* * *

『SHAMAN KING』シリーズの新章『SKY』についてその意味や由来など詳しく知るにつれ、武井先生の頭の中にあるイメージが徐々に見えてきました。もっともっと詳しく掘り下げたいところですが、先生の活動は『SHAMAN KING』だけではありません。次回はその他お仕事への取り組みを通じて、武井先生の「ものづくり」全体について深掘りしていきます!

(タシロハヤト)

【画像】武井宏之先生が息を吹き込んだ『ビックリメン』のキャラクターたち シールの力でバトル開始!(5枚)

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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k