ツッコミ不可避なファミコンの「キャラゲー」 主人公の奇行にドン引き?
マンガ・アニメ・映画などの登場人物や、キャラクターの再現に力を入れた「キャラクターゲーム」(キャラゲー)の歴史は古いものの、クオリティに問題を抱えた作品が多く発売されていました。なかには原作の流れを無視したものや、「なぜこうなった?」と首をかしげたくなるようなキャラゲーもあったのです。
開発陣にツッコみたくなる「謎仕様」なキャラゲー
オリジナル作品ではなく、マンガやアニメといった特定の版権を活用して作られた「キャラクターゲーム」(以下、キャラゲー)は、ビデオゲームの歴史を語る上で欠かせないジャンルです。昨今のキャラゲーはゲームハードの性能や開発陣の技術力が高いこともあり、原作の世界観を丁寧に再現した作品も多々見受けられます。
しかし、1980年代のファミリーコンピュータ(以下、ファミコン)市場の頃は話が別でした。当時のキャラゲーは全体的に「ゲームバランスが不安定」「原作にあまり基づいていない」など、作品としてのクオリティが低い傾向にあったからです(もちろんすべてのキャラゲーに当てはまるわけではありませんが……)。
ファミコン時代のキャラゲーはどのような代物だったのか。今回はマンガ&アニメをベースとしながらも、さまざまな点でツッコミどころ満載だったファミコンのキャラゲーを振り返ります。
●『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』
1983年に連載がスタートし、累計発行部数が1億3500万部を超えるグルメマンガ『美味しんぼ』をもとに作られたファミコン用ソフト『美味しんぼ 究極のメニュー三本勝負』(以下、究極のメニュー三本勝負)は、かなりシュールな出来栄えです。
同作はコマンド選択式のアドベンチャーゲームで、プレイヤーは主人公の「山岡士郎」を操作し、シチュエーションごとに適切な選択肢を選びつつ、各話のテーマに沿ったメニュー作りに励むことになります。なお、『究極のメニュー三本勝負』に収録されているストーリーは「味で勝負!」「もてなしの心」「究極のラーメン」の計3本です。
山岡士郎をはじめ、実父でありライバルとも言える「海原雄山」、ヒロインの「栗田ゆう子」に東西新聞社の同僚など、登場キャラクターも原作ならではの面子が揃っています。しかし全編を通してアレンジがされ過ぎているせいか、キャラゲーにおいて重要な「再現度」という点では、必ずしも良い出来とは言えません。
特筆すべきはゲームオーバーシーンでした。選択肢を間違えると、「警察官を殴って自分の骨が折れる」「食材を切り刻んで台無しにしてしまう」……などなど、原作では見られない光景が映し出されます。ゲームオーバー時の「丸まって頭を抱え込む山岡士郎」の姿も相まって、『究極のメニュー三本勝負』はシュールな「バカゲー」としての側面も持ち合わせていました。
●『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』
冒頭で述べた通り、基本的にキャラゲーは「原作をどれだけ再現できているか」という点が重要視されます。ゲームならではのアレンジを効かせる場合でも、まずは原作にしっかりと基づき、なおかつ原作ファンが喜ぶポイントを抑えることが求められます。
こうした前提を踏まえた上でご紹介したいのは、『CITY ADVENTURE タッチ MYSTERY OF TRIANGLE』(以下、CITY ADVENTURE タッチ)です。高校野球と青春ラブコメを軸に展開された人気マンガ『タッチ』を原作とした、「異世界冒険アクションゲーム」でした。
『CITY ADVENTURE タッチ』は野球が題材のゲーム作品ではなく、「パンチ(作中に登場するペット犬)の子犬を見つけるため、達也・和也・南の3人が異世界におもむく」という内容になっていました。原作で描かれた青春模様を8割ほど無視した、かなりの迷作です。
自分たちが住む町とは様子が異なった異世界にて、達也と和也は戦車やピエロを相手に肉弾戦で立ち向かいます。計10匹の子犬を助け出すという名目こそあれど、最初から最後まで、どうしても原作との相違点が目立ってしまいます(原作ではパンチの子犬は2匹のみ)。
まだ、快適に遊べるのではあれば「この方向性もアリかも?」と評価されたかもしれませんが、「南は戦闘に参加せず、敵と接触するとダメージを受けてその場で泣き崩れる」という仕様を含めてゲームシステムに不親切な部分が多く、やはり残念な仕上がりだと言わざるを得ませんでした。