「悪魔の実」は2つ食べても大丈夫? 『ワンピ』「食べると死ぬ」にミスリードの可能性
『ONE PIECE(ワンピース)』のキーアイテム「悪魔の実」は、ふたつ食べると「体が跡形もなく飛び散って死ぬ」といわれていますが、実際にそのような事態が作中で描かれたことはありません。はたして「悪魔の実」の恐ろしい言い伝えは、本当に真実なのでしょうか。
「悪魔の実」はふたつ食べても大丈夫?

『ONE PIECE(ワンピース)』に登場する能力者たちは、それぞれ「悪魔の実」と呼ばれる不思議な果実によってその力を得ています。この「悪魔の実」には恐ろしげな伝承が付いてまわり、ふたつ以上の実を口にすると「能力者の身体は粉々に砕け散る」といわれている果実でした。
とはいえ、実際に砕け散った人物が作中で描かれたことはありません。むしろ言い伝えが本当なのかどうか疑っている人もいるようで、ネットの一部ではさまざまな珍説の類も生み出されています。
「悪魔の実」のミステリーをひもとくカギ、それは「ビッグ・マム」ことシャーロット・リンリンの変貌です。ビッグ・マムは巨人のような見た目をしていることでお馴染みですが、マザー・カルメルの孤児院で過ごしていた幼少期の頃にも、同じようなまんまる体型でした。
しかし単行本第86巻のSBSに描かれた28歳の姿は、別人のようなスラッとした体型、そしてロックス海賊団に所属していた頃の回想シーンでもスリムボディが描かれ、幼少期とも現在の姿とも違っています。彼女はただでさえ食い意地が張っている性格なので、この変化はちょっとした異常事態ともいえるでしょう。
ではなぜビッグ・マムは一時期、体型が激変していたのでしょうか。そこで一部の読者から飛び出したのが、「若い頃は『スベスベの実』の能力者だった」という説でした。
「スベスベの実」といえば、ルフィに敗北した後にアルビダが手に入れた「悪魔の実」です。元々ふくよかな体型だったアルビダは、この能力を手に入れたことで、体型や顔立ちが激変し、別人のようなプロポーションを手に入れました。
つまりビッグ・マムも若い頃に「スベスベの実」を食べた結果、同じような体型の変化が起きたのではないか、というわけです。きわめて突飛な発想ではありますが、異常な食欲と体型の変化という矛盾に折り合いを付けるには、たしかにこの説に頼るしかない気もしてきます。
そしてビッグ・マムは幼少期の時点で、すでに「ソルソルの実」の能力の持ち主でした。だとすると彼女の存在こそが、ふたつの「悪魔の実」を食べても無事で済むことを証明している……のかもしれません。
当然ここで気になるのは、ビッグ・マムが「スベスベの実」の力をまったく使っていない点です。普通に考えると、単純に「ソルソルの実」しか食べていないためだと結論付けたくなりますが、もうひとつの仮説として「ふたつの実を食べるとひとつ目が押し出される」という可能性を考えてみましょう。
「パンクハザード編」では、「サラサラの実 モデル:アホロートル」を食べたスマイリーという巨大なスライムが登場します。この生き物がシーザー・クラウンに飴玉型の薬品を投与され、ガス兵器「シノクニ」へと変化した際、近くに置いてあったリンゴが「悪魔の実」に変貌していました。
ここでシーザーが与えたキャンディーに、「悪魔の実」の成分が含まれていたとすればどうでしょうか。スマイリーが新たな能力を得た代償として、「サラサラの実」の能力を失ったようにも見えてきます。つまり「悪魔の実」をふたつ食べると、ひとつ目の実が体外に押し出されるのだと解釈できるでしょう。
そうなるとビッグ・マムは何らかの理由で一度「スベスベの実」を口にし、その後あらためて「ソルソルの実」を食べたことになるため、混乱はするものの、一応辻褄(つじつま)は合うともいえそうです。
では、この仮説が正しいとすれば、誰が何のために「悪魔の実をふたつ食べると身体が砕け散る」というウソの言い伝えを広めたのでしょうか。
なお、「黒ひげ」ことマーシャル・D・ティーチは、作中唯一の例外として、ふたつの能力を有しているキャラクターです。不死鳥のマルコから「体の構造が異形」と評されていた身体の本領は、ふたつの「悪魔の実」を食べても無事であることではなく、ふたつの能力を共存させられることにあるのかもしれません。
以上はあくまで推測の域を出ない話であり、決定的な描写がないことも事実です。ストーリーはすでに最終章を迎えているので、「悪魔の実」の真相が明かされることを待ちましょう。
(ハララ書房)