アニメ『放課後さいころ倶楽部』 少女たちの心をつなぐ、珠玉のボードゲームたち
2019年10月2日から放送されているTVアニメ『放課後さいころ倶楽部』は、少女たちがボードゲームを通じて心を通わせ、成長していく物語です。劇中に毎回登場するさまざまなボードゲームは、実際に世界中で遊ばれているものばかり。それらの魅力と作中における役割は、見事にリンクしていました。
ゲームを通じて、少女たちは自らの世界を広げていく

2019年10月2日(水)から放送されているTVアニメ『放課後さいころ倶楽部』は、世界に実在するさまざまなボードゲームが毎回劇中に登場し、登場人物どうしの心を通わせ、物語を展開させているのが大きな特徴です。同作に登場するボードゲームの魅力とストーリーにおける役割について、ボードゲームジャーナリストの小野卓也さんが解説します。
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マンガ単行本がすでに15巻まで発売されている『放課後さいころ倶楽部』のアニメ化は、多くのボードゲーム愛好者にとって望外の喜びでした。この作品は、登場人物の人間模様や心の動きが、ボードゲームの内容とリンクしており、単なるボードゲームの紹介にとどまらないところが大きな魅力です。
ベテラン愛好者にとっても、ボードゲームを始めた頃の純粋な楽しさを思い出させてくれます。アニメ版の、動きのあるルール紹介も分かりやすく、より深くストーリーに感情移入できます。
第1話で登場する『マラケシュ』は、フランスのゲーム作家とゲームメーカーによって2007年に発行され、フランス年間ゲーム大賞を受賞、ドイツ年間ゲーム大賞にもノミネートされました。モロッコの古都マラケシュを舞台に、自分のじゅうたんを上手く敷いてお金を儲けるボードゲームです。デザインの洗練された美しさは、フランスの得意分野といえるでしょう。
クラスメイトのミドリを追ってボードゲームショップ「さいころ倶楽部」に迷い込んだミキとアヤは、店長と『マラケシュ』を遊ぶことになります。ところが、どんな時も真剣勝負がモットーの店長に、大きく差をつけられてしまいます。見るに見かねたミドリは、ミキのパートナーとして途中参戦することに(何このワクテカな展開!)。

「このピンチはチャンスに変わる。リスクを恐れて逃げてたら、どのみち店長の一人勝ち。ここは前に進むべきよ!」
ミドリの言葉を聞いたミキは、アヤに誘われた「迷子ごっこ」のシーンを思い出しました。目的地がないまま歩けば、どこに行っても迷子にならない。「知らない道も景色も音も匂いも、全部まとめて楽しんじゃえばいいんだよ!」
ミキはアヤとミドリのふたりと出会うまで、「世の中に楽しいことなんて何もない」と思っていました。しかしそれは友達付き合いのリスクを避け、自分の殻に閉じこもってきたからだったということに気付きます。
『マラケシュ』は、お金を支払うリスクができるだけ少なくなるように進めるのが定石です。しかしここぞというときには、リスクを冒して前に進むことも必要なのです。それはその先に勝利があるからではなく、勇気を振り絞って前に進むこと自体が、「新しい世界に飛び込んでいく」という楽しさだからです。