『サイボーグ009』子どもには伝わったのか? 55年前の人種差別がテーマのエピソード
親子で観るとよいアニメ

それにしても、55年前の放送で「果てしなき逃亡」を見た子どもたちはどう感じたのでしょうか。現在と比べ、日本には縁遠かったであろう黒人の人種差別問題がテーマですから、背景がわからない人は多かったでしょう。ましてや「We Shall Overcome」の曲に込められた意味など知る由もなかったと思われます。物語の意図を理解するのはかなり難しかったはずです。
この『サイボーグ009』や『鉄腕アトム』など、日本のアニメ草創期の時代は、マンガやアニメは子どもに悪影響を及ぼすただの娯楽、と受け取られる風潮がありました。制作者が、作品に何らかのメッセージを込めていたことを知らない大人は多かったと思います。たとえばこの「果てしなき逃亡」は、親が子どもと観ながら、そして観た後に、内容を解説してあげて一緒に考える教材のような作品だったように思います。
『サイボーグ009』は「反戦」を主なテーマにしていて、悲しい戦争の出来事を後世に伝えるようなエピソードがたくさん詰まっています。これも大人が子どもに戦争を伝えやすくするツールだったように思いますし、実際に親子で観て戦争について話し合った家庭もきっとあったはずです。
今、親子で一緒に見て学び合えるアニメ作品、何があるでしょうか。
(石原久稔)