【金ロー】大ヒット作『アナと雪の女王』に集まった、微妙な姉妹関係への「共感」
新しいヒロイン像が招いた、「想定外」の後日談
エルサとアナとの間に起きる確執に、ホッとする人もいるのではないでしょうか。もちろん、仲のよい姉妹や兄弟はたくさんいますが、元ロックバンド「オアシス」のギャラガー兄弟のように、顔を合わせるとケンカばかりしてしまうケースも少なくありません。同じ家庭で育ち、似た価値観を持っているぶん、ささいなことが原因となって溝が生じてしまいがちです。
エルサとアナはここぞというところで助け合うことになるのですが、大人になってからは適度に距離を置いている姉妹や兄弟が実際には多いのではないかと思います。ひとりになったエルサが氷の宮殿で伸び伸びと暮らし始めるシーンは、家族間にトラブルを抱える人たちにとっては、より共感度が高い場面だったに違いありません。家族のことで思い悩んでいるのは自分だけではないと、親しみを覚えたことでしょう。
これまでにない、新しく自由度の高いヒロイン像を生み出したことで『アナ雪』を大ヒットへと導いたジョン・ラセターですが、ハリウッドで起きた「♯MeToo」運動のなか、女性スタッフへの不適切なハグやキスなどのセクハラ行為が問題視され、2018年にチーフ・クリエイティブ・オフィサーを務めていたピクサーからもディズニーからも立ち去ることになりました。記録的な大ヒット作の裏側には、
そんな皮肉めいた後日談もあったのです。
(長野辰次)