監督本人も「トカゲ」扱い? 25年前に物議を醸した「ハリウッド版ゴジラ」の最近の評価は
長年愛され、日本のみならずハリウッドでも映画が制作されている大人気怪獣・ゴジラですが、最初の海外版『GODZILLA』はゴジラファンから賛否両論を呼びました。11月3日に控えている新作映画『ゴジラ-1.0』公開の前に、その理由や現在の評価について振り返ってみましょう。
ゴジラというより「巨大なトカゲ」?
1954年の映画第1作以降、長年世界中で愛される怪獣・ゴジラは、11月3日には新作映画『ゴジラ-1.0(マイナスワン)』の公開も予定されています。その人気ゆえに海外進出も果たし、過去にはハリウッド映画としてローランド・エメリッヒ監督作の1998年版『GODZILLA』と、ギャレス・エドワーズ監督作の2014年版の『GODZILLA』が作られました。
2014年の『GODZILLA』は、それ以降も世界観を共有した怪獣映画シリーズ「モンスター・ヴァース」のメインの怪獣として、何作も他の怪獣たちと戦いながら登場しているのに対し、エメリッヒ監督版は賛否が分かれて続編の制作は叶いませんでした。
1998年版ゴジラは巨大なトカゲのような姿をしており、「怪獣王」の異名を持つ日本のゴジラとは違って『ジュラシック・パーク』に出てくるような「恐竜」の趣きが強いです。
他にも同作のゴジラは代名詞ともいえる「放射能光線」を吐かなかったり、卵を大量に産んだり、最後はミサイルで倒されてしまったりと、従来のゴジラから受けるイメージとは異なった点がありました。
ただ、そんな98年版ゴジラの生い立ちを見ていくと、冒頭でイグアナなど爬虫類が棲んでいる島が核実験の舞台となったことが描かれており、誕生のきっかけに「放射能」の影響が示唆されるなど、ちゃんとオリジナルとの共通点も存在しています。
1998年版ゴジラが誕生した理由に関しては、後に2022年の映画『ムーンフォール』について語るインタビューのなかで、エメリッヒ監督自身が明かしています。
2022年1月27日に公開された「THE Hollywood REPORTER」のインタビュー記事によると、内心ではゴジラをやりたくなかった監督は東宝に「お腹の大きなゴジラをやっているわけではありません。私は彼をトカゲのように扱っています」と無茶な交渉を持ちかけていました。しかし、意外にも東宝側がその話を受け入れてしまい、製作が進んだようです。
そして、98年版のゴジラは、従来とは違うゴジラとしていじられるようにもなりました。公式に同一の存在だとは明言されてはいませんが、2004年公開の日本映画『ゴジラ FINAL WARS』には、98年版のゴジラに似たジラという怪獣が登場します。そして、日本版ゴジラとハリウッド版ゴジラの対決が、疑似的に描かれることになりました。
ただ当時の評価を反映してか扱いは非常に悪く、ジラはゴジラにあっさりと倒されたうえ、北村一輝さん演じる戦いを監視していたX星人統制官から、「やっぱりマグロ食ってるようなのはダメだな」と吐き捨てられてしまいます。
エメリッヒ監督版『GODZILLA』の中盤では、ゴジラがおびき寄せるための罠として用意された大量のマグロにかぶりついたシーンがあったため、揶揄する材料にされたようです。
しかし、公開当時はゴジラ作品として厳しい評価こそ受けたとはいえ、作品自体は決してつまらないわけではありません。
筆者も改めて視聴してみましたが、数々のディザスター(災害)映画を手掛けたエメリッヒ監督らしく、ゴジラという「災害」についての描き方はとても秀逸だといえます。人間の視点の高さからゴジラを映してその巨大さを強調し、街中を走り回るゴジラにも疾走感が漂い、迫力のある映像が随所に見て取れました。
ネット上のレビューなどを見ると、後追いで鑑賞した人たちのなかには「評判を聞いて最初からゴジラとは別モノとして見た」という方もおり、「モンスターパニック映画としては面白い」「映画単体としては決して悪くない」「映像としての迫力はさすがハリウッド」など、年が経つにつれて作品を再評価する声も高まっています。
ちなみに、2024年にはハリウッド版ゴジラの新作『Godzilla x Kong: The New Empire(原題)』が公開予定です。『ゴジラ-1.0』の公開も迫るこの機会に、本当に「マグロばかり食ってるやつはダメ」なのか、あらためて1998年版『GODZILLA』を見直してみてはいかがでしょうか?
(LUIS FIELD)