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『銀河漂流バイファム』放送から40年 打ち切りを回避した「意外な要因」とは?

TV放送から40年を迎えた『銀河漂流バイファム』。ロボットアニメ全盛期に生まれた作品ですが、その内容は独特な世界観を貫いています。その作風ゆえに打ち切りの危機にあった際にも、それを回避できることになりました。

派手なメカアクションよりも印象的だった人間ドラマ

『銀河漂流バイファム』に登場した量産機のひとつを立体化した、「HG 1/144 バイファム スリング・パニアー装備型」(BANDAI SPIRITS)
『銀河漂流バイファム』に登場した量産機のひとつを立体化した、「HG 1/144 バイファム スリング・パニアー装備型」(BANDAI SPIRITS)

 今年2023年は、1983年に『銀河漂流バイファム』が放送開始してから40年の節目にあたります。ロボットアニメが隆盛を極めた時期に製作されながらも、他のロボットアニメ作品とは一線を画していた本作について振り返ってみましょう。

 1983年10月21日に放送開始した『バイファム』は、「バンダイ」からの打診で「日本サンライズ」が企画したロボットアニメです。バンダイをメインスポンサーとする作品はサンライズとしては初めてで、これまでにない番組枠の開拓という意味合いもあったそうです。

 同作の「原案」に富野由悠季さんの名前があるのは、あの『機動戦士ガンダム』の監督というネームバリューを利用する意図からでした。実際、この当時の富野さんは『聖戦士ダンバイン』の総監督をしていたのですから、本作に関わる余裕はなかったでしょう。

 そこで監督となったのが、原作にもクレジットされている神田武幸監督です。前年には『太陽の牙ダグラム』を高橋良輔さんと一緒に監督していました。ちなみに高橋さんは、この時期は後番組『装甲騎兵ボトムズ』の監督をしています。こういった事情から、本作のクレジットでは「原案」と「原作」という、違いの分かりにくい形になりました。

 物語は冒険小説『十五少年漂流記』がベースとなっています。これはバンダイ側からの「次のガンダムになるような作品を作ってほしい」という要望があったからとも言われています。もっとも『十五少年漂流記』をベースにしたサンライズ作品は多く、『蒼き流星SPTレイズナー』(1985年)や『無限のリヴァイアス』(1999年)など、影響下にある作品は他にもありました。

 しかし、そのなかでも『バイファム』はもっとも『十五少年漂流記』のドラマを色濃く受け継いだ作品と言えるかもしれません。なぜなら本作はロボットアニメでありながら、巨大ロボットに対するヒーロー性は薄く、あくまでも子供たちのサバイバルに焦点を当てているからです。

 この点は、初期の展開を見ると一目瞭然でした。なにしろ主役メカであるバイファムは量産機です。それゆえに1話で撃墜されたカットがあります。そして主人公となるロディ・シャッフルがバイファムに乗るのは数話先の話でした。

 こんな風に書くと、メカを商品として売るスポンサーが困りそうな展開ですが、本作のセールスは好調だったそうです。メイン商品であるプラモデルの実績は黒字でした。もっとも味方側メカだけが売れて、敵側メカの在庫はかなりありました。そのため、敵側メカの多くは商品化されていません。

 これは、本作の人気はメカというよりもレギュラーとなる13人の少年少女たちキャラクターによるところが多かったことが一因でしょう。何せ敵側のククトニアンは当初はアストロゲーターと呼ばれる謎の異星人で、あえて敵側のドラマを描かない構成となっていました。

 それゆえキャラ人気は当時として大ヒットしたと言えるほど高いものだったと思います。アニメ雑誌ではたびたび表紙を飾り、その誌面では大きく扱われることもよくありました。ムック本も各社から出版され、主題歌やサウンドトラックは好調なセールスを記録しています。

 ちなみに主題歌『HELLO, VIFAM』は、当時としては異例の歌詞がすべて英語の曲でした。当時は今ほどカラオケがポピュラーでなかったため、アニメファンが集まると大合唱になることが多かったのですが、本曲は「すべて歌詞が英語だから歌えない」と、よくネタにされていたことを記憶しています。

【画像】どんな装備だったっけ? 量産機「バイファム」の一例を見る(6枚)

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