78年和製版『スパイダーマン』の後の作品への影響とは? 「意外なモノの元祖」だった
大人気のヒーロー映画である『スパイダーマン』シリーズは、実は日本でも1978年に東映版『スパイダーマン』が放送され、さらに同作は後の戦隊シリーズに大きな影響を与えていました。今回は東映版『スパイダーマン』の「謎すぎる功績」を見ていきましょう。
日本版『スパイダーマン』が存在した!しかも巨大ロボも登場!?

アメリカンコミックの有名なヒーローであるスパイダーマンは、日本でも人気を博しています。2023年11月3日の『金曜ロードショー』(日本テレビ系)では、「マーベル・シネマティック・ユニバース」のなかのスパイダーマンが主人公の映画『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』が放送される予定で、すでにSNS上では歓喜の声が相次いでいます。
翌週10日には『ファー・フロム・ホーム』の続編『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の放送も控えています。また新作アニメ映画『スパイダーマン:ビヨンド・ザ・スパイダーバース』の上映も2024年に公開を予定していましたが、米俳優組合(SAG-AFTRA)のストライキによる影響で、現在の公開時期は未定になりました。
そんな注目度の高い『スパイダーマン』ですが、実は日本でも東映が制作したテレビシリーズ『スパイダーマン』が、1978年から79年かけてに放送されていたのはご存知でしょうか。後に同作は、「戦隊シリーズに大きな影響を与える」という不思議な功績を残しています。
そもそも本家のスパイダーマンは主人公が放射能を浴びたクモに噛まれることで、壁に貼りつくなどクモのような特殊能力を得てしまいます。そして、その後に町の平和を脅かす犯罪者と戦い、周りから自身のことを問われると、「あなたの親愛なる隣人、スパイダーマン!」と名乗るようになりました。
しかし東映版『スパイダーマン』は原作の設定とは違って、当時の主流だった日本の特撮ヒーロー作品の流れを取り入れています。その設定とは、スパイダー星からやってきた宇宙人に力を貰った主人公が、悪の組織「鉄十字団」と戦いを繰り広げるというものでした。
そんなスパイダーマンの決めゼリフは「地獄からの使者、スパイダーマッ!」で、原作の「親愛なる隣人」とはまったく違います。また同セリフはネットミームとして広がり、セリフの一部分を切り取って「ダーマ」という愛称で呼ばれているようです。
また原作アメコミと大きく違う点はスパイダーマンが宇宙戦闘艦の「マーベラー」、さらにマーベラーが変形することで完成する巨大ロボ「レオパルドン」を操縦することです。
ちなみにレオパルドンは撮影上の都合もあったのか、戦闘シーンが非常に短くて敵の攻撃にびくともしないなど圧倒的な防御力があり、このことからファンの間では「特撮史上最強秒殺ロボ」と呼ばれています。
最強とささやかれるほど人気を集める巨大ロボ・レオパルドンですが、レオパルドンの存在は同じく東映のスーパー戦隊シリーズに大きな影響を与えています。
戦隊シリーズといえば、終盤に「巨大ロボット戦」になるのが定番の流れです。しかし、1975年から放送された1作目『秘密戦隊ゴレンジャー』や、1977年放送の2作目『ジャッカー電撃隊』には巨大ロボットは登場しません。初登場したのは『スパイダーマン』以降に作られた、1979年放送の第3作目『バトルフィーバーJ』からです。
『秘密戦隊ゴレンジャー』にはバリブルーンやバリドリーンと名づけられた飛行メカなどがあり、『ジャッカー電撃隊』にもスカイエースという名の戦闘機は登場しますが、人型に変形や合体はしないので、巨大ロボットではありません。
巨大ロボの他にも、戦隊シリーズに影響を与えた要素があります。東映版『スパイダーマン』は「腕に着けたスパイダーブレスレットを用いて変身」というギミックが導入されているのですが、その後の戦隊シリーズも「携帯可能なアイテムで変身する」という流れが取り入れられています。東映版『スパイダーマン』はアメコミの『スパイダーマン』を参考にしただけの作品かと思いきや、戦隊シリーズに与えた功績はとても大きなものになりました。
ちなみに権利関係の事情があるのか、東映版『スパイダーマン』は「東映特撮ファンクラブ」ですら配信されておらず、DVD-BOXも2005年にようやく発売されたものの現在は絶版となっています。偉大な功績を残している作品なので、もっと見られる環境が整うことを願うばかりです。
(LUIS FIELD)