色んな要素でドキドキ!怪獣バトル×活劇の異色作『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』
1966年公開の『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』は、ゴジラ映画が完全に子供向けにシフトする前の過渡期に作られた作品です。そのために前半は、先が見えない南海の孤島でのサスペンスが展開します。怪獣バトルとアクションと少しのお色気で、老若男女が楽しめる娯楽映画になりました。
ゴジラ俳優・宝田明さんが個性開花で大暴れ!

1966年公開の『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』は、ゴジラ映画が完全に子供向けにシフトする前の過渡期に作られた作品です。そのために前半は、サスペンスフルで先が見えない南海の孤島での冒険が展開されます。そして、怪獣バトルやアクションと少しのお色気で、老若男女が楽しめる娯楽映画になりました。
作中ではお互いの素性を知らない若者4人が、偶然に葉山海岸で南太平洋を横断する予定のヨットに乗り合わせます。気が付くと、ヨットは海に乗り出してしまい、その後に暴風雨のなかで巨大な海老の怪獣エビラに襲われました。
ヨットが転覆してしまい、海に放り出された4人は南海の孤島に打ち上げられます。その孤島では悪の秘密結社が工場を作り、原水爆を製造していました。4人はモスラが住むインファント島の島娘・ダヨと協力し、島の谷底で眠っているゴジラを目覚めさせて工場を破壊して、強制労働させられているインファント島民を救い出そうとします。
冒頭はほとんど4人を中心に物語が展開し、なかなか怪獣が出てきません。4人の若者のリーダー格になる主人公・吉村はヨットのオーナーを装っていましたが、話が進むうちにその正体が明かされていきます。吉村は指名手配中の金庫破りで、奪った現金を持ってヨットを奪い逃走しようとしていたのです。他の若者とのサバイバルとダヨとの出会いにより、彼は正義の心が芽生えて悪の組織を打倒するために行動します。
本作が怪獣映画とアクション映画をミックスしたような構成になったのは、同時上映された作品が、TVで人気だった青春ドラマを映画化した『これが青春だ!』だったことが関係しているかもしれません。怪獣目的の子供だけでなく、少し年上の10代もターゲットに入れていたのでしょう。
また1965年公開の前作『怪獣大戦争』では謎のX星人を演じた水野久美さんは、本作で島の娘として全編ビキニ姿を惜しげもなく披露しており、これは子供に付き添ったお父さんを狙った場面とも考えられます。
そして、主人公・吉村を演じたのは宝田明さんで、第1作の1954年『ゴジラ』、1964年『モスラ対ゴジラ』、1965年『怪獣大戦争』でも主演しているゴジラ映画の常連です。しかし、これまでの作品では役柄がそれぞれ違っても、「優等生」の好青年タイプでした。それまでは典型的な2枚目的な役柄でしたが、『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』ではガラッと役柄が変わっています。
吉村は金庫破りのプロの悪人なのに悪の組織には敢然と立ち向かい、どんなピンチの時でも軽口を言って鮮やかに切り抜けるというルパン三世的なキャラクターです。そんな本作はこれまでゴジラ映画を手がけていた本多猪四郎監督から、福田純監督に交代しています。
宝田さんは前年に福田監督と組んで、アクション映画『100発100中』の主演に抜擢されています。それまでの優等生的役柄から卒業し、キザなキャラクターを確立して個性を開花させていました。この『100発100中』の主人公のキャラクターがそのまま移植されたのが本作です。
そこからエレガントでありながらアクションもこなせる宝田さんのキャラはすっかり定着して、テレビドラマ『平四郎危機一発』シリーズなどでもその魅力を放ちます。